金玉満堂
決戦!炎の料理人

1995/10/05 新宿シネパトス
「包丁人味平」と「包丁無宿」「美味しんぼ」を足してさらに過激にした
「料理の鉄人」風香港中華料理対決。by K. Hattori



 そもそも、この映画のタイトルをどう読むのかが僕のテーマでありました。何の躊躇もなくこの映画のタイトルをズバリ口にできた方がいたら、僕はその人を尊敬します。問題は「金玉」をなんと読むかですね。「カネタマ」「コンギョク」それから……。こういうものは、正解がわかってしまえば他愛のないものです。『金玉満堂』は「キンギョクマンドウ」と読むのだそうな。辞書によれば「金玉」とは、金と玉のように得がたく珍重すべきものの意だそうです。そうか、やっぱり「金玉」は大切な物だったんだなぁ……。という感想は、すでに最初から脱線。

 内容は香港の名門中華料理店を舞台にした料理勝負ものですが、「包丁人味平」から「美味しんぼ」「将太の寿司」にいたるまで、少年マンガ誌では定番のアレがナニです。考えてみれば、この手の料理勝負マンガって、すでにマンガ界における一大ジャンルだなぁ。マンガでこれだけ人気のある世界が、今まで映画になっていなかったのが不思議だが、いざ映画になってみると、それが香港映画だというのも不思議だ。(今度松竹で「美味しんぼ」を映画化するそうですが、これも楽しみ楽しみ……。)

 見どころはなんといっても、過剰なまでにショーアップされた料理シーンの演出にある。冒頭の料理人対決で、豆腐の彫刻を作ってしまうのにもぶったまげたけど、内容はさらにエスカレートして行くのが映画の常。そういえば、この映画の監督はアクション映画の巨匠ツイ・ハークであった。この映画は、料理を素材にした完全な活劇映画なのだ。それが完全に明らかになるのは、香港中華料理界支配をもくろむ悪の料理人に、突然厨房で料理勝負を挑まれる場面でしょう。作る料理は焼きソバと酢豚なんだけど、包丁さばきといい、鍋のまわし具合といい、炎と油のスパーク具合といい、この流れとリズムは完全にアクション映画のソレなのです。こうなってくると、お話の内容などどうでもよろしい。店の権利を巡って争われる、満漢全席三番勝負がこの映画のクライマックス。テーマとなる食材が、熊の手、象の鼻、猿の脳味噌の3種というのが、すでにおかしい。本当に旨いのかねぇ、などと考えてはいけない。

 ところで、欧米人から見ると、東洋人の年齢は良くわからないなど言いますが、この映画のレスリー・チャンを見ると、僕も気持ちの上では欧米人になれます。この人はいったい本当の年齢はいくつなのかしら。マイケル・J・フォクスの中国人版みたいな人だなぁ。よくわからないが、すごい人だ。でも、この映画では彼より、アニタ・ユンのぶっとび加減が素晴らしくよい。『つきせぬ想い』では市井の少女歌手の役でしたが、この映画でも彼女は可憐な歌声を聞かせてくれるのです。ああ、でもこのギャップ。たまりません。クセになりそう。


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