ジャッジ・ドレッド

1995/09/28 日劇プラザ
シルベスター・スタローンが生ける法律ジャッジ・ドレッドを演じる。
双子もCGで作ってしまえばよかったのに。by K. Hattori



 映画が好きな人にはそれぞれ自分の特等席というものがあって、映画館で前の方に座るのがいいのか、それとも後ろの方に座るのがいいのかは、一概に「これが正解」という訳にはいかないようです。中には映画館の端の方から、画面を斜めに見上げるのがいいという人もいますから、まさに好きずき。映画館で好きな女の子とデートをするとき、彼女の好きな席が自分の好みと違ったりすると悲劇ですよね。

 僕はどちらかというと、後ろの方より前の方が好きです。劇場にある指定席というやつは、僕にとっては特等席ではないのですね。あれは概ね、中央やや後方、白いカバーの掛かったシートということになっていますが、僕はそれよりずっと前の方の席が断然好きなのです。それに、画面は見下ろすよりも見上げていた方がいい。丸の内ピカデリーの指定席は2階(ビルの中だから本当は何階になるんだろう?)にあって、画面をやや見下ろすスタイルになるのが気にくわない。お芝居を観るときはともかくとして、映画は絶対に正面中央よりやや前の席が、僕にとっての特等席なのです。

 大画面を前の方の席、つまり画面の近くで観ると、画面が一度に端から端まで見渡せないことがあります。今回この映画を観るときも、まさにそういう状態になっていました。しかし、この映画はそれが絶対に正しい映画です。こんな映画、お話の内容はどうだっていいんだもんね。役者もどうだっていい。見どころは、その圧倒的なスピード感と、大画面で観る迫真のスケール感、ビジュアルデザインです。

 冒頭のタイトルが原作(だよね)の漫画をそのまま使っていますが、これは「これから始まる物語は、漫画だよ、漫画だからね!」と何度も念押ししているように見えました。結果それはその通り、中身はまさに漫画です。勧善懲悪。荒唐無稽。どこがどうなったかは知らないが、正義は必ず勝つのです。この単純さ。明快さ。

 各場面はどれも過去のSF映画やアクション映画の焼き直しというところで、オリジナルというものがほとんど見あたらない。しかし、この手の娯楽映画はそれでかまわないと僕は思う。映画は芸術作品じゃないんだから、常にオリジナルを追い求める必要などないのです。オリジナルを模倣し、踏襲しながら、その上を行くスケールに拡大再生産してくれれば、観客はそれなりの満足をするものですからね。僕は満足しました。ただし、この方法では観客が驚いてはくれませんが……。

 この映画の見どころは、やはりCGをふんだんに使った特撮場面でしょう。全然さりげなくない、これでもかこれでもかというCG映像の洪水に、充実した満腹感を味わえます。役者の影が薄かろうと、お話がおざなりだろうと、僕はこれで満足です。


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