エンジェルス

1995/06/10 日比谷映画
「エンジェルスが優勝したら帰って来る」と言い残して去った父親。
少年の願いを聞いて天使たちが球団を援護する。by K. Hattori



 予告編を観て期待していたのになかなか本編が公開されず、気がついたら半年ぐらいたってしまったのではないだろうか。けっこう売り方に苦労しているようで、エンディングに日本では別の曲をくっつけたりしていますが、ほとんど効果はありません。予告編を観る限りでは『くたばれ!ヤンキーズ』みたいな話かと思っていたら、内容は似ているようで少し違う。原作は40数年前の映画だそうで、流行りのコンピュータグラフィックを使ったリメイクです。ただ、見どころがそのCGシーンしかないというのが辛い。脚本がメロメロで、どうもすっきりしません。はっきり言ってしまえば、つまらない。退屈ですらあります。

 エピソードのひとつひとつは悪くないんだけど、それがつながってひとつの物語を構築して行かない。あるいは、面白いエピソード同士の間をつなぐシーンが、いかにも凡庸でつまらない。物語が盛り上がって映画の体温が上がってきても、その熱が持続しない。登場人物の造形もエピソードとしては描かれているが、それが物語の中でうまく生かされていない。例えば、ダニー・グローバー演ずるチームの監督と、彼を現役生活から引退に追いやったチーム専属解説者のライバル関係など、もっとしつこく描くと面白かったと思うんだけどなぁ。主人公の少年が暮らす家の様子も、僕にはよくわからない。あの家の主人である女性の少年たちに対する思いも、もうすこしたっぷり描いてほしかった。

 少年と父親との関係は、僕が見ると「そりゃないよなぁ」というものなんだけど、アメリカの観客には切実な問題として受けとめられているのかもしれない。だからまぁ、このあたりのぶっきらぼうな描写自体は許してもいい。ただ、それにしてもあの父親は薄情すぎるように思える。もう少し別のエピソードのスパイスをきかせて、少年と父親の関係をウェットに演出した方が、最後のハッピーエンドも生きてくると思うんだよな。あるいは、少年の孤独感のようなものをもっと際立たせないと、最後に彼があんなに大喜びする理由がわからない。少なくとも、あのエンディングはあまりにも安直な解決手段だと僕には思えた。

 脚本はダメだが、CGシーンと野球のシーンはうまいものだ。最初に天使たちが現れるシーンの、バカバカしいまでのハッピーさ加減。太陽の光の中から、くるくる回りながら、やたらニコニコ笑った天使が舞い降りてくるシーンには得も言われぬ高揚感があった。また、お約束通り天使の現れない優勝決定戦。疲れ切ったピッチャーが最後の打者を迎えると、観客総立ちの天使ポーズでピッチャーをはげます。この最後の試合の場面はファインプレーの連続もあって、最高に盛り上がるぞ。


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