ノース
小さな旅人

1995/04/16 ニュー東宝シネマ2
ロブ・ライナーの生活臭い演出がファンタジーに向かないのかも。
エピソードのひとつひとつが今ひとつ弾けない。by K. Hattori



 僕は自分の好きな映画ベスト5ぐらいには、『フィッシャー・キング』と共に『恋人たちの予感』入れることを常としています。そのお気に入り映画の監督ロブ・ライナーがとった新作ですから、この映画『ノース』もやはり観に行かざるを得ません。観終わって感じたのは、ロブ・ライナーにとって『恋人たちの予感』という映画がいかに特殊な位置づけであったかの再確認でした。

 僕なりにライナー監督の評価をすれば、彼はやっぱり二流の監督だってことになるんでしょう。ちょっと待ってくれ、彼には他にもいい映画が何本かあるじゃないかといわれそうですが、世間がなんと言おうと僕は『スタンド・バイ・ミー』なんて認めないもんね。同様に、『ミザリー』も認めない。『スタンド・バイ・ミー』なんてノスタルジーとナツメロで涙腺を刺激するだけの映画だし、『ミザリー』はキャシー・ベイツの熱演なしには成り立たない映画。『恋人たちの予感』は、そのほとんどが脚本家ノーラ・エフロンの功績です。それはエフロンが自分で監督した2本の映画(『ディス・イズ・マイライフ』『めぐり逢えたら』)の素晴らしさを観れば一目瞭然でしょう。『恋人たちの予感』は、エフロンの脚本が8割で、残りはメグ・ライアンとビリー・クリスタルの魅力でできている映画です。

 ロブ・ライナーという監督は、物語を緻密に組み立てることもできないし、かと言ってはめを外していい意味での滅茶苦茶ができるわけでもない、ごく普通の監督なのです。こぎれいに、そこそこの仕事をそこそこの予算規模で仕上げるのが得意のようですね。『ノース』のようなファンタジー映画には向かないのかなぁ。彼の持つ生活臭あふれる演出は、この映画をスケールの小さいものにしてしまった。イライジャ・ウッドというキャスティングも、あまりよくなかったと思う。もっと浮き世離れした配役が適当だったと思うけどね。そうそう、この映画は子役が全然ダメだよ。黒幕の新聞記者を演じた子役も、線が細くて役に負けていた。

 ブルース・ウィリスの守護天使や、ダン・エイクロイド演ずるテキサスの富豪など、それでも映画の前半は結構面白かったんだけどねぇ。特に、テキサスの屋敷の大食堂で、富豪夫妻が中心になって突然ミュージカルが始まるところなんざ最高ですぜ。僕はあの後世界各地でノースを引き取ろうとする大人たちがミュージカルを繰り広げるのかと思ったら、なんのことはない、ミュージカル風の演出はここ1カ所だけでした。がっかりだなぁ。

 とにかくこじんまりとまとまりすぎて、ナンセンスなギャグがことごとく死んでいる。ギャグの不発は、ヘタすりゃ民族差別になりかねないよ。観ているこっちは、ハラハラしっぱなしです。



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