四姉妹物語

1995/02/22 日劇東宝
グリコのCFに登場している四姉妹が映画になった。
脚本にも演出にもやる気が見えない駄作。by K. Hattori


 こういう映画が日本映画を滅ぼすのだ。企画のことを言っているのではない。お仕着せの企画でも面白い映画がいくらだって作れることは、多くのプログラム・ピクチャーが証明している。問題は脚本と演出だ。少なくとも僕はこの映画から、作り手側の熱意や熱気の一片たりとも感じられない。お仕着せの素材を、ただ漫然とフィルムに感光させるだけで、それが映画と言えるのだろうか。

 冒頭のシーンから、すでに作り手側のやる気のなさが伝わってくる。監督はCFシリーズも担当した本田昌広。CFと違って予算も時間もないのはわかるが、それにしたってカメラにばんばん照明のフレアがかぶさるようでは、お粗末もいいところだぞ。

 欠点の大半は脚本にあると思うのだが、原案の赤川次郎って、この映画にはどの程度タッチしていたんでしょうか。あくまでも〈原案〉どまりで、〈脚本〉にはノータッチなのがミソですね。意味深です。人気作家の赤川次郎が原案なら、そこそこのものは観られるのではと期待させておいて、出来上がりがこれ。たまりません。とほほほほ。

 全編、登場人物達の行動に必然性がない。動機が曖昧。気持が伝わってこない。主人公四姉妹のキャラクターもうまく描き分けられておらず、どの人物も中途半端にベタベタ甘ったるい。戯画化されていて生身のリアルさがない。僕はこの四姉妹の誰も好きになれない。こいつらは全員どこかおかしい。

 これらのほとんどは脚本の説明不足や、演出の力のなさに起因するものだと思う。映画を見始めた当初は、どこがどう不味いのかをいちいちチェックしていたのだが、最後まで観てもほとんどいいところがなかったので勘定するのをやめてしまった。

 プロット自体はそんなに悪くないと思うのだが、シーンのつなぎ方に問題があるのか。あるいは、四姉妹の全てに平等な比重を置いたことで、結局はどれも中途半端になってしまったのか。原因はいろいろ考えられそうだが、詮索してもむなしい。このアイディアで、これだけのキャストを配しながら、なぜこの程度のものしか作れないのか、大いなる謎だ。

 それにしても、四姉妹の誰もが、とびきりきれいにも、可愛くも撮れていないのは問題だね。それぞれのキャラクターがタレントから浮いていて、あまりしっくり来ないんだな。最悪は牧瀬里穂だけど、清水美砂もギスギスした女にしか見えないし、中江有里もぼんやりした印象。今村雅美もちょっと固い。要するに四姉妹が全部ダメ。こんな映画、4人の女の子がみんなきれいにさえ撮れていれば、それで観客の大半は満足するんだよ。内容はアイドル映画、いうなればプログラム・ピクチャーだもん。それで御の字ですよ。そんな最低限のことさえできていないんだから、この映画はまったく処置なしだね。


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