続・若い季節

1995/01/28 大井武蔵野館
豪華ゲストも加わってさらにスケールアップされた続編。大傑作!!
歌と踊りの楽しさは言葉にできないほど。by K. Hattori


 オープニングは前作『若い季節』の引用から始まる。しかし、前作から2年後に作られたこの映画のパワーは前作の2倍以上。圧倒的なパワーで観客をノックダウンするのは、中尾ミエ・園まり・伊東ゆかりの三人娘だ。3人の歌と踊りが、シネマスコーープの画面せましと炸裂する。これはすごすぎる。

 相変わらず淡路恵子が社長を務めるプランタン化粧品だが、宣伝担当部長のハナ肇は三木のり平にバトンタッチ。ハナが宣伝部を外された理由は、部下である植木等が何かしくじりをやらかした責任をとってのものらしい。その証拠に、宣伝部に植木の姿もない。かわりに宣伝部には古今亭志ん朝の姿が見える。彼は前作で、就職を乞う人見明から麻雀で大金を巻き上げたのが縁となり、結局はプランタン化粧品に就職したらしい。植木は志ん朝と面識がないので、床屋で会っても彼には気がつかない。このあたりは、よくできている。(な〜んちゃって。)

 オープニングの空撮ショットが60年代初頭の東京の街並みをなめて行くが、その最後の方にわが家の近所が写ったりなんかして、これは僕にとってはご近所ムービーなんだな。やたらとノスタルジックに60年代を回想するのではなく、この空撮ショットひとつで、僕にとってこの映画は〈今この時〉の映画になっている。もちろんそれはこの映画の製作者達がそれを意図したわけではないが、映画や映像というものには、そうした作用があるから面白い。

 前作に比べると、この続編はよりスケールアップした音楽映画になっている。(ミュージカルとはちょっと違うと思う。あくまでもバラエティーのノリなのだ。)三人娘はもちろんのこと、谷啓が、藤田まことが、歌い、踊る、その楽しさ。屋内シーンから突然大がかりなステージでの音楽シーンに移るスピード感は、クレージーものそのまま。監督は同じ古澤憲吾。こんなに楽しくていいのかしら。短いシーンの積み重ねが、映画に軽快なテンポとリズム感を生み、その流れに観客として身を浸すことの出来る快感に酔いしれる。

 描かれている風俗は多少古くなっているかもしれないが、描かれている内容は全然古びていない。まったく面白いとしか言えない、娯楽映画の傑作だ。

 それにしても30年前の東京の風景って、やっぱりすごい。街並みが今と変わらない分、ディテールの変化に目を奪われる。何と言っても、あの車の量の少なさってなんだ。逆に言えば、今の東京には車が多すぎる。首都高速にしろなんにしろ、結局昭和30年代の交通量をモデルにして設計してあるということが、こういう映画をみるとつくづくわかる。

 こんな歴史のお勉強まで出来てしまうこの映画、お金に余裕があれば、ぜひLDで手に入れておきたい1枚なんだけどなぁ。悲しい金欠病。


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