スウォーズマン
女神復活の章

1995/01/25 銀座シネパトス3
前作で死んだと思われた東方不敗、ここに復活。嬉しいパチパチ。
話は弱いがブリジット・リンの魅力は健在。by K. Hattori


 映画の冒頭に前作の総集編がついてるのが嬉しい。総集編と言うより、前作ラストの大活劇をコンパクトにまとめたものなんだけど、これだけでもう期待がぐんぐんふくらんできた。僕はこの部分だけで入場料分は楽しんでしまったので、あとはオマケです。

 本編の滑り出しは悪くない。前作で現れたのは怪しい日本の武士と忍者達だったけれど、今度の相手はスペインだ。海の上に浮かぶスペイン無敵艦隊の帆船。明の役人の案内で上陸したスペイン人達は、武術の秘伝書・葵花宝典を奪うべく、あろう事か東方不敗の墓を掘り起こす。スペイン人を押しとどめようとする明の役人。そこに現れたのは、妖気漂う白髪の老人だった。この老人こそ、身を隠していた東方不敗だ。いいぞ〜、待ってました!!

 今回の見せ場はふたつある。ひとつは、ブリジット・リン演ずる東方不敗と、ジョイ・ウォン演ずる贋東方不敗の一騎打ち。といっても、ジョイ・ウォンはもともと東方不敗の愛人で、彼を呼び寄せるために名をかたったのだから、これは初めから勝負以前。ただ、前半ジョイ・ウォンが演じた贋東方不敗ぶりがなかなかによい。ブリジット・リンの本家・東方不敗が一応は〈男〉であるのに対し、ウォンのにせ者は最初から〈女〉の色気をぷんぷん放つ。

 男装の麗人。ベルバラのオスカルのような凛々しさ。雄々しい振る舞いと、その下に隠れている女性のしなやかさのアンバランスが、何とも言えずよろしいなぁ。うひひひひ。思わずへらへらオヤジ笑いしてしまいます。この男に化けた女が側室と床に入り、小さなビンに詰めたアヘンをふたりが舌の先でちょろちょろ舐め合うんだからたまらんぞ。ところがこの側室、じつは敵である霧隠雷蔵が放った刺客の忍者なんだな。ちなみにこいつは男です。男である東方不敗のもとに女に化けた男の忍者が忍んでいるんだけど、この東方不敗はにせ者で本当は女だから……。う〜む、倒錯の世界だわ。

 こうした前半が圧倒的にいいので、後半はちょっと物足りないな。最後はユ・ロングァン演ずる明の役人と東方不敗が一騎打ちになって、これはこれで見せ場も多くて面白いんだけど、クライマックスとしては前作で見せた多重構造の決闘シーンに数段劣る。1対1の戦いだと、どんなに道具立てに工夫しても、やっぱり殺陣の構成が単調になるんだよね。ただ、真っ赤な日本の鎧姿で戦う東方不敗は、武者人形みたいでかわいかったなぁ。

 前作に比べると、ずいぶんとスケール・ダウンした印象の作品。キャラクターも平面的で、陰影に乏しい。ジョイ・ウォンのキャラクターがもっと立つと、物語が立体的になって面白かったと思う。ブリジット・リンもあまり見せ場がなかったけれど、これは『ドラゴン・イン/新龍門客機』が楽しみだ。


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