スウォーズマン
女神伝説の章

1995/01/12 銀座シネパトス3
ブリジット・リンお姉様が色気と闘志みなぎる東方不敗を熱演。
謎の日本人忍者集団の歌声が耳から離れなくなる。by K. Hattori


 3年前の僕なら、観たとたんに記憶から抹殺したであろう映画。全編デタラメでメチャクチャ。東映特撮物をそのまま時代劇にしたような、クサイ芝居と爆薬のオンパレード。武術の秘伝書を盗んだことで究極のパワーを手に入れた男と、それに敵対するリー・リンチェイ演ずる主人公達との戦いを描いているのだが、この戦いがとにかく派手。見事に荒唐無稽で、ばかばかしさを通り越して痛快だ。

 時代は秀吉の天下統一直後。秀吉の配下に入ることを拒んだ一群の武将達が中国大陸にわたっており、これがアヤシイ童謡を歌いながら炎の周りを踊り回ったり、手裏剣を投げつけたり、あろう事かでっかい手裏剣の上に乗って空中戦をしたり、一撃必殺の暗殺剣法名を叫びながら日本刀を振り回す。これが全然必殺じゃないのがおかしいし、「分身の術」でぜんぜん分身しないのも愉快。

 とにかくあの手この手とよく考えるもんだ。感心する。物理的に不可能な技の掛け合いもなんのその。ジャンプの途中で方向を変えるなんて当たり前。巨大な鉄カギと鎖で大真面目に刺繍糸と綱引きを演じたり、広げた指の先から人間の精気を吸い込んで相手をしぼったスポンジのようにしてしまったり、下らなかろう、いかにもウソくさかろうが、お構いなしに繰り広げられる技の数々。「北斗の拳」の残酷さと「ドラゴン・ボール」の荒唐無稽がドッキングして、それに忍者とカンフー、爆発と血しぶきがかぶさり、さらにメロドラマと純愛根性の梶原一騎風味をまぶしたところに、艶っぽさを少々。

 登場人物はひたすらわかりやすく、一面的に描かれていて、誰も成長しない。簡単に登場して、簡単に死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ、みんな死ぬ。本当に簡単に死ぬ。バラバラになる、爆発する、破裂する、切り刻まれる、全身から血が吹き出す、首が飛ぶ。死ぬ死ぬすぐ死ぬみんな死ぬ。

 こうした娯楽映画の〈娯楽〉の部分のみが突出した映画を観ると、アクション映画の中にまでいちいち人間ドラマを持ち込んでくる最近のアメリカ映画が姑息に思えてくるなぁ。これに比べると、『スピード』や『トゥルーライズ』のドラマ部分が、『風と共に去りぬ』と同じぐらい重厚に見えるものなぁ。パクリだろうがマネだろうが、面白い物は容赦なく全部ぶち込む割り切りよう。

 見せ物としてのアクションに徹底したいさぎよさが、たまらなく快感になりそう。本編の前に、続編である『女神復活の章』の予告編をやっていたけれど、これも実に楽しそうで、僕はこれも観に行こうと既に決心している。ただし、この手のものは好き嫌いがありそうだから、他人は誘わない。3年前の僕を誘ったとしたら、たぶん後からひどく恨まれそうだもんなぁ。


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