熱帯楽園倶楽部

1994/09/26 丸の内松竹
『僕らはみんな生きている』で映画賞を総なめにした一色・滝田のコンビ作。
役者たちが風景の中にかみ合っていないのが残念。by K. Hattori


 主人公・紺野みすずは24歳のツアーコンダクター。タイ・バンコクに団体客を引き連れてきたのはいいが、スカーフ一枚で荷物運びをやらされたり、夜中にコンドームを買いに行かされたり、常識では考えられない客が多いのだ。相部屋の客が骨格から見て歯ぎしりしそうだと部屋替えを要求してきた客まで現れるしまつ。これではホテルのキャッシャー相手につい愚痴りたくもなる。ところがキャッシャーの若い男は「コッカク」という言葉になぜかドギマギ。両替を頼むと、なぜか余分のコインを寄こしたりする。このコインが実はマフィアの使う割り符で、ホテルのキャッシャーはマフィアの連絡員。「コッカク」は連絡員の合言葉だった。数日後、パスポートを引き上げようとしても貴重品ボックスは空。慌てるみすずだがパスポートは戻らない。なんとか書類を手配して客を帰したが、みすずは会社をクビになる。

 みすずは街で知り合った詐欺師グループに弟子入りすることになる。彼女は一度彼らに金をだまし取られたことがあるが、その手口はじつに鮮やかで、さわやかな印象を持つほどだった。詐欺師の片割れ飛田林は日本の大学生。もうひとりのジョイはタイと日本の混血で日本語ペラペラ。そこに元ツアコンのみすずが加わって、最強の詐欺軍団が誕生した。中でも日本人旅行者は詐欺師にとっては鴨がネギ背負って歩いているようなもの。チームにはザクザクとお金が入るようになる。

 浮かれた旅行者を騙しているうちはよかったが、ある日みすずが目を付けた相手は日本のやくざ。タイに拳銃の買い付けに来ていた二人組だ。一度はこの二人をカモにした詐欺チームだが、騙されたことを知ってただで済むやくざではない。猛烈な反撃が待ちかまえていた。日本から数十人のやくざが、みすずたちを追ってバンコクに乗り込んでくる。これにタイのマフィアがからみ、さらにみすずの持っているマフィアの割り符もかかわって、やくざ・マフィア・詐欺チーム三つ巴の追いかけっこ。最後は『スティング』もかくやという大逆転でやくざとマフィアに一杯食わせて映画は終わる。(以上は全てウソ。)

 一色脚本映画では、『僕らはみんな生きている』『卒業旅行/日本から来ました』に続くタイロケ作品。前2作がそれぞれ架空の国を舞台にしていたのに対して、今回は実際のタイ・バンコクを舞台にした映画です。映画を観た人がタイに観光旅行に行きたくなるような、素敵な風景の連続。一色・滝田コンビの映画としては『僕らはみんな生きている』や『病は気から/病院へ行こう2』の方がよかったと思うけれど、これはきっとタイという国に対する一種の恩返しなのだろうと思いながら観ていました。主演の3人はじつにのびのびしていていい。清水美砂の存在感、風間杜夫の熱演、萩原聖人のがんばりが、原色に彩られた熱帯の風景の中で輝いています。


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