ビバリーヒルズ・コップ3

1994/09/26 スカラ座
お馴染みアクセル・フォーリーが活躍するシリーズ第3弾だが内容はイマイチ。
ジョン・ランディスの演出はもうひとつ歯切れが悪い。by K. Hattori


 エディ・マーフィがお茶目なアクセル・フォーリー刑事に扮するシリーズ第3弾。ケチな自動車の故買屋を捜査していたはずが、なぜか派手な銃撃戦に発展。敵はアクセルの目の前で彼の上司を射殺。逃げる犯人の車を追うアクセルをさえぎったのはFBIの捜査官。どうやら事件は自動車泥棒では済まなくなっているらしい。アクセルは残された遺留品を頼りに、ロサンゼルスの遊園地に向かう。

 アクセル・フォーリーというキャラクターが定着して違和感がなくなってしまったため、ビバリーヒルズと型破りの黒人刑事の間にミスマッチの面白さを見つけることはもはや不可能。今回は遊園地と犯罪、そして銃撃戦というミスマッチがコンセプトなのだろうが、これはあまり生かされているとは思えなかった。ラストの対決シーンで、遊園地のアトラクションは銃撃戦のための遮蔽物でしかない。もう少しアトラクションごとの特徴を生かしたアクションシーンの演出が考えられてもいいと思う。

 ギャグもいまひとつ冴えない。ラストの銃撃戦に登場する新兵器を使ったギャグなどはその典型で、この新兵器自体に現実味がないのだからギャグの前提にも切実さがない。全体に、エディ・マーフィのコメディアンとしての特性を生かし切れていなかったと思う。監督はジョン・ランディスだが、この監督はしばしばすさまじいギャグの爆発力で観客を熱狂させる力を持っている人。そんな彼の作品としては、今回の映画にはいささか不満を持たざるを得ない。物語にも切れがない。全体にパワー不足。もちろんこれは、期待が大きかったせいでもある。

 今回の映画で一番の見どころは、遊園地の観覧車を使った大スタントシーン。事故で宙づりになった観覧車から幼い兄妹を助け出すのがアクセル刑事。小さなゴンドラの屋根から屋根へひらりひらりと飛び移るシーンはスリル満点。確かジョン・ランディスはスタントマン出身だったと記憶するけれど、その面目躍如という大スペクタクルだった。

 冒頭の自動車故買屋のシーンで、太った自動車整備工がふたり、ラジオの音楽に合わせて歌い踊るシーンは楽しくていい。やがて工場中の人間が音楽のリズムに合わせて身体を動かしはじめるとまるでミュージカル。物語の流れの中で不必要に長いこのシークエンスは、『ブルース・ブラザース』の監督であるランディスの作家性を感じさせる数少ないシーン。このノリで最後までやってくれれば、面白かったんだけどなぁ。このあたりで期待に胸をふくらませていた観客は多いと思います。

 脚本に未整理な部分がある。例えばローズウッドの同僚フリントの立場がわかりずらい。僕は結局、彼の正体が最後まで飲み込めなかった。彼は敵か味方か寝返り組か改心したのか。誰か僕に正解を教えてください。


ホームページ
ホームページへ