ルディ
涙のウィニング・ラン

1994/06/29
夢を諦めなければきっと夢はかなう。そんな古典的なスポ根ドラマ。
肉体のハンディを乗り越えさせたのは友情の絆だ。by K. Hattori


 特別傑作というわけではないけれど、ちょっといい映画です。なによりも正攻法で真面目に作っているのに好感を持つし、描かれている物語(実話だそうです)も実によいのですね。

 人間は自分に与えられた分相応の暮らしを選びさえすれば、さしたる苦労をすることもなく、そこそこ幸福に暮らして行ける。でもそんな暮らしに満足できない人は、そこから自分の手足を使って抜け出してゆく自由も持っているのだ。この映画の主人公・ルディは大学のフットボールチームでプレイするのが幼い頃からの夢だったが、家の経済状態と学力不足から一度は進学をあきらめる。しかし4年の鉄工所勤めの後、夢断ちがたく再び進学することを決意。それこそ死にものぐるいで勉強し、アルバイトで生活費を稼ぎ、体力維持のために運動も欠かさず、やがて夢を実現させるまでを映画は描く。

 主人公が目標のためにひたすらひたむきに前に向かって進んでゆく様子が、この映画を観るものを感動させる。とにかく彼は文句を言わない。弱音を吐かない。いつか夢が叶うという信念と自信、いろいろな意味で恵まれないという弱点をバネにして、めきめきと目標実現に向けて近づいてゆく。そんな彼をあざ笑う者もいるし、足を引っ張ろうとする者もいるが、逆に彼を応援してくれる者もいる。そんな人間同士のつながりが、少しづつ彼を夢の実現に運んでいったんですね。

 全然今風じゃない素材を、真っ正面から取り上げた映画です。あまりにも正直すぎる映画だけれど、アメリカ人の理想とする「アメリカン・ドリーム」のひとつの原型が、確実にこの中にはあります。演出もていねいで、俳優たちもみな生き生きとしている。主演のショーン・アスティンは、愚直なまでにスポーツを愛する一本気な青年を好演。ヘンにひねった映画ばかり観て気持ちがすさんだときに観ると、心が洗われてリハビリになります。こびりついた心の垢を落としてくれる映画でした。


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