セッションズ

2013/10/01 20世紀フォックス試写室
障害を持つ男性がセックス・セラピーで脱童貞を目指す。
面白い素材だがドラマの歯切れが悪い。by K. Hattori

13100102  マーク・オブライエンは38歳。詩人でありジャーナリストでもある彼は、子供の頃にかかった小児麻痺の後遺症で、首から下が動かないという深刻な障害を持っている。そんな彼が、教会で新しく赴任してきた神父に相談を持ちかける。「態度が横柄な介護士をクビにしていいだろうか?」。神父は「もちろんだとも」と答えるのだが、これがマークの新しい人生の扉を開くことになった。新しく雇った介護士は、若くて美人のアマンダ。熱心に世話をしてくれる彼女に、いつしか心惹かれていくマーク。彼女も自分に好意を持ってくれているようだ。「君のことを愛してる。結婚してほしい!」。意を決して告白したマークだったが、彼女はそのまま仕事を辞めてしまった。落ち込むマークは、雑誌から障害者のセックスについてのインタビュー取材を依頼された。彼は何人かの障害者に会って話をしながら、自分も障害者向けのセックス・セラピーを受けてみようと決心する。こうして出会ったのが、セックス・サロゲート(代理人)のシェリルだった。

 主人公マーク・オブライエンは実在の人物。この映画は彼が1990年に雑誌に発表した手記と、周辺の人々への取材をもとにした実話の映画化だ。劇中で披露されるマークの詩なども、実際にマーク・オブライエンが作ったものが使用されている。彼は1999年に亡くなっているが、そのことも映画の中で紹介されており、映画はマークの大学卒業のセレモニーで始まり、葬儀のセレモニーで終わる枠物語(額縁小説)のような形式になっている。

 監督・脚本はベン・リューインで、主人公マークを演じるのはジョン・ホークス。ホークスの演技はかなり熱の入ったものだが、何しろ体が自分では動かせないのでドラマとしての広がりが乏しい。この映画の世界を広げているのは、主人公を支える周囲の人たちだ。その筆頭はセックス・サロゲートとして主人公の愛の水先案内人となるシェリルで、演じているヘレン・ハントが堂々としたプロフェッショナルの女性を好演している。もうひとりは主人公の友人として、彼の相談相手になるブレンダン神父。演じているのはベテランのウィリアム・H・メイシー。この人物は映画のために創作されたらしいのだが、主人公を励ましたり、主人公の心の声を受け止める、映画を観ている観客たちの代理人のような立場で動きまわる。この人物がいることで、映画はずいぶんと風通しのいいものになっていると思う。

 ただしこの映画、シェリルが従事しているセックス・サロゲートという仕事がどんなものかよくわからないまま、主人公とシェリルの間にロマンスめいたものを芽生えさせて、一風変わった恋愛映画にしてしまったのが残念。障害者向けのセックス・セラピーというユニークな素材が、手垢の付いたきれい事のロマンスもどきで台無しになってしまったようにも思う。

(原題:The Sessions)

Tweet
12月6日(金)公開予定 新宿シネマカリテ
配給:20世紀フォックス 宣伝:ブレイントラスト
パブリシティ:メゾン、スターキャスト・ジャパン
2011年|1時間35分|アメリカ|カラー|1.85:1|ドルビーデジタル
関連ホームページ:https://www.facebook.com/FoxSearchlightJP
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:The Sessions
ホームページ
ホームページへ