女たちの都

〜ワッゲンオッゲン〜

2013/07/04 映画美学校試写室
衰退化した町を救おうと女たちが団結して料亭を開くが……。
キャスティングが豪華でなかなか楽しい。by K. Hattori

13070401  物語の舞台は熊本県天草市牛深。かつては漁業で栄えた町だったが、漁獲量の減少から今は若者人口が減少。一説によれば、「衰退都市No.1」だと言うではないか。このままでは、進学のため町を出て行った子供たちが、町に戻ってこなくなってしまう。役所は事あるごとに「地域活性化」と言うが、そんな空念仏だけでは町の衰退を食い止めることはできない。何か思いきったことをせねば! そんな危機感を感じた女たちが、町再生のために一念発起して新事業を立ち上げる。それは町の古い遊郭を改装して、料亭として再スタートさせること。料亭につきものなのは芸者だ。全国に呼びかけて芸者志望の若い女性を集め、新生した料亭の経営は順調に軌道に乗り始めたかに思えたのだが……。

 地方都市を舞台にした、おそらくは低予算の映画。しかし出演者の顔ぶれは豪華だ。料亭立ち上げを企画するヒロインの弓枝を演じるのは、大ベテランの大竹しのぶ。その仲間たちには、松田美由紀、杉田かおる、西尾まりといった顔ぶれ。女たちを支え、時に反発する男たちには、ブラザートム、遠藤憲一、中村有志など。仲間の家の姑役に長山藍子。脚本は南えると、監督と共同脚本に禱映(いのりあきら)。

 正直言って、脚本にも演出にもいろいろと問題がある映画だと思う。例えば元遊郭から料亭に生まれ変わった「三浦屋」の様子がよくわからない。芸者になるという名目で全国から集まってきた女性たちがどんな仕事をしているのかがわからないし、どこに寝泊まりしてどんな生活をしているのかがさっぱりわからない。また映画の終盤ではこれらの女性たちの行き場が宙に浮いてしまい、物語から放り出されてしまうのが気になって仕方がない。主役クラスの人物たちがそれぞれどんな仕事をし、どんな生活をしているのかが、映画の中盤に近くなるまでわからないのも欠点だろう。こんなものは映画の導入部で、絵としてパパッと見せてしまう方法があったはず。職業や生活を伏せておく意図があったわけではないだろうし、これは単に手際が悪いのだ。

 しかしこの映画、それでも面白いのだ。脚本や演出の不手際や弱味を、出演している俳優たちのノリの良さで強引に押し切っているようなところがある。話のつながりや合理性より、勢い重視で有無を言わさず観客の胸ぐらを引っつかみ、ぐいぐいと引きずり回していくようなパワーがあるのだ。それが最大限に発揮されているのは、映画のクライマックスにある路上での大乱舞。この場面、なんと雪が降っている。最初は何かの演出なのかと思ったが、たぶんそうではない。これは撮影を予定していた日に、たまたま雪が降ってきてしまったのだ。その中で、薄着の男や女たちが踊りまくる。中村有志などは全裸(ふんどし姿)で踊っている。無茶苦茶だ。しかしこの無茶な感じが心地よい。結局は八方ふさがりになっている物語を、この無茶な勢いが突き破っている。

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秋公開予定 シネスイッチ銀座
配給:株式会社映画24区 配給・宣伝:アルゴ・ピクチャーズ
2012年|1時間43分|日本|カラー|ビスタ
関連ホームページ:http://jaijai-movie.com
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