ハード・ラッシュ

2013/06/03 京橋テアトル試写室
伝説の運び屋が現役復帰して南米パナマから運ぶお宝は……。
主演はマーク・ウォルバーグ。by K. Hattori

13060301  プロの運び屋として裏社会の人間たちからも信頼が厚く、幾度も危険な仕事を成功させてきたクリス。だが同じ仕事をしていた父が逮捕されたことをきっかけに足を洗い、今では堅気の仕事をしながら、愛する妻や子供と一緒に暮らす平和な日々を送っている。そんなクリスに、妻の弟アンディが助けを求めてきた。仲間と一緒に受けた運びの仕事でヘマをし、仕事の依頼人であるブリッグスに締め上げられているというのだ。もう裏社会と関わるのは御免だが、相手が義弟だから助けないわけにはいかない。クリスはアンディの負債を返済するため、再び危険な運び屋の仕事に舞い戻る羽目になる。昔の仲間たちを集めて貨物船に乗せ、目指すは中米パナマ。そこで精巧な偽造ドル紙幣を手に入れて、アメリカに持ち込もうという計画だ。だが机上の計画をいざ実行してみると、思いがけないトラブルに出くわすものだ……。

 マーク・ウォルバーグ主演のクライム・サスペンス映画で、共演はケイト・ベッキンセール、ベン・フォスター、ジョヴァンニ・リビシなどかなり豪華。監督はバルタザール・コルマウクル。現在のウォルバーグは体のキレも悪そうだし、とても頭のいい犯罪者には見えない。しかしこの役は「昔は凄かったけど、ここ何年かは引退していた」という設定だから、あまりピリピリした空気を漂わせても違うものになってしまう。この映画のウォルバーグを見て「なんだかずいぶん体が重そうなんじゃないの?」と思うならそれが正解。なぜならこれはそういう役なのだから。ウォルバーグが運び屋のリーダーではちょっと不安がありそうだって? それも正解。だってこれはそういう映画なのだから。

 一度は堅気になった男が何らかの事情で再び危険な世界へ……という映画はずいぶんたくさん作られていて、これは犯罪映画の中でも定番の設定と言えるかもしれない。設定が定番なので、新しい映画の作り手たちはこうしたストーリーの枝葉の部分であれこれヒネリを入れようとする。だがこの映画の場合、それが良かったのか悪かったのか。僕個人の感想としては、この映画は大型貨物船を使った非合法物品の密輸という部分に限って物語を膨らませ、それ以外のあれやこれやは思い切って割愛した方がよかったと思う。たぶん映画を準備している段階では、貨物船の中だけでは話が持たないと思ったのだろう。でもせっかく主人公たちを船に乗せたのに、この映画では船という舞台設定があまり生かされていないように思う。船の中にあらかじめ送り込んでおいた仲間とのチームワークや、主人公の存在を警戒して監視を怠らない船長たちとの駆け引き、コンテナ輸送や関税手続きのディテールなど、エピソードとして拡張できそうな所はいくらでもあったはずだ。銃撃戦やカーチェイスは確かに派手だが、この映画より上手にそれを見せてくれる映画は他にたくさんある。この映画には、この映画でしか見られないものを見せてほしかった。

(原題:Contraband)

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6月15日公開予定 丸の内ルーブル、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか
配給:東京テアトル 宣伝:マンハッタンピープル
宣伝:フリーマン・オフィス、スターキャスト・ジャパン
2012年|1時間49分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタルSRD
関連ホームページ:http://hardrush-movie.com
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