ゼロ・ダーク・サーティ

2013/02/25 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン1)
2011年5月のビンラディン殺害作戦をリアルに映画化。
映画らしい楽しみがあまりない。by K. Hattori

13022501  2008年製作の『ハート・ロッカー』で女性として初のアカデミー監督賞を受賞したキャスリン・ビグローの新作は、9.11テロの首謀者ウサマ・ビンラディンを追う若きCIA女性エージェントを主人公にした実録サスペンス映画。物語は9.11テロの生々しい録音に始まり、CIAによるアルカイダ関係者の尋問、2011年5月2日のウサマ・ビンラディン殺害までを時間を追って描いていく。脚本は『ハート・ロッカー』に続いてマーク・ポールが担当。ヒロインのマヤを演じるのは、『ツリー・オブ・ライフ』のジェシカ・チャステイン。

 CIAの新人分析官マヤは、9.11テロの首謀者ウサマ・ビンラディンの行方を捜すチームに配属される。最初の仕事は、パキスタンのCIA拠点でアルカイダ関係者を尋問することだ。公然と行われている捕虜に対する拷問に、表情をこわばらせるマヤ。同僚の男性分析官は、マヤを評して「美人だが、まだ子供じゃないのか?」と言う。CIAの取り調べはきれい事では済まされないダーティな部分があり、マヤは汚れ仕事の必要性を頭では理解しながら、まだ体がそれを受け付けないのだ。しかしそんなマヤも、ほんの数年で過酷な取り調べに眉ひとつ動かさない筋金入りの分析官へと成長する。CIAの調査が遅々として進まない中、世界各地で繰り返されるアルカイダのテロ。一部の情報では、ビンラディンは既に空爆などで死亡しているとの説もある。しかしマヤたちはそれまで死亡したと言われていてビンラディンの側近が、今も生きていることを突きとめる。彼はアルカイダ幹部の連絡役として、今も組織内で力を持っている。彼の近くにいる幹部こそ、ビンラディン本人なのではないか? マヤたちはあらゆる情報網をたぐり、通信傍受や衛星写真などのハイテク装置を駆使しながら、ビンラディンの潜伏先を絞り込んで行く。

 この映画を観る人の多くは、メディアを介して9.11テロ事件をリアルタイムで経験している。9.11テロはたった12年前の出来事なのだ。そしてビンラディン殺害は2年前のことだ。そしてアルカイダ系グループは今もなお活動を続けている。テロとの戦いは終わらず、この映画はすべて現在進行形の出来事を描いている。映画はドキュメンタリーのような迫力があり、捕虜の拷問や、米軍特殊部隊によるビンラディン殺害作戦の一部始終を再現した場面などはこの映画の見どころだろう。しかしそうしたジャーナリスティックな面白さはあるにせよ、この映画の2時間38分という上映時間はいささか長すぎるように思う。ヒロインの長い戦いを、長い上映時間で再現しようという意図があるのかもしれないが、その長い長い時間をコンパクトに切り詰めて凝縮するのが、映画というものなのではないだろうか。力作ではあるだろう。だが映画としての醍醐味は薄い。

(原題:Zero Dark Thirty)

Tweet
2月15日公開 新宿バルト9、新宿ミラノ
配給:GAGA
2012年|2時間38分|アメリカ|カラー|1.85:1|ドルビーデジタル、Datasat、SDDS
関連ホームページ:http://zdt.gaga.ne.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
シナリオ:Zero Dark Thirty: The Shooting Script
ホームページ
ホームページへ