きいろいゾウ

2013/01/09 ショウゲート試写室
宮﨑あおいと向井理が田舎暮らしの夫婦を演じるドラマ作品。
西加奈子の同名小説を映画化。by K. Hattori

Kiiroizo  売れない小説家のムコ(武辜歩)と、妻のツマ(妻利愛子)は、三重の田舎でママゴトのような新婚生活をしている。ムコは近くの老人ホームで介護の仕事に従事しながら、夜になると少しずつ小説を書き溜め、日記を書いてから眠る。時々家を訪ねてくるのは、近所に住むアレチさんと認知症の妻セイコさん。登校拒否で学校を休んでいる小学生の大地くんと、その押しかけガールフレンドのジェニーこと洋子など。平穏そのものに見えるふたりの暮らしだが、じつはムコの過去には大きな傷跡がある。それは彼の背中にある、大きな鳥のタトゥーに関わるもの。感受性の鋭いツマはそのことに気づいているが、あえて口に出して問いただすことはない。だがある日、ムコ宛てに差出人のない1通の手紙が届いたことから、ふたりの生活のバランスは大きく崩れていくことになる。

 西加奈子の同名小説を、宮﨑あおいと向井理主演で映画化した若い夫婦の物語。物語の中には彼ら以外にも何組かの夫婦が登場することからも、この映画が全体として「夫婦」をテーマにしていることがわかる。タイトルの『きいろいゾウ』は、劇中に挿入される寓話的なアニメーションに登場する空飛ぶゾウのこと。きいろいゾウは幼いヒロインを背中に乗せて、世界中を旅することができるが、同時に仲間のいない寂しさや孤独を味わってもいる。仲間を作るためには、空を飛ばない灰色の普通のゾウにならなければならない。個性的だが孤独な生き方を選ぶか、平凡だが仲間のいる生き方を選ぶかというジレンマが、主人公たちの生き方や夫婦関係のあり方を何かしら象徴しているというわけだろう。ただしその意味は、はっきりとわかるようには描かれていない。きっと何か関係がありそうだが、どのように関係があるのかは、映画を観た人が自分で考えなければならない。

 きいろいゾウの意味解釈に限らず、この映画は観る人に「自分で考える」ことを要求する作品だ。ツマが動物や植物と言葉を交わせるのはなぜか。物語の途中から、その言葉が聞こえなくなるのはなぜか。ムコと夏目夫妻の関係が具体的にどのようなものであったのかもはっきりとはわからないし、映画の随所に登場するファンタジックな場面の多くは、それが現実なのか、夢なのか、はっきりしない描き方になっている。電車の中で酔っ払いが「グッド・ナイト・ベイビー」を歌う場面などはその最たるもの。歌っているのは憂歌団の木村充揮だ。上手すぎる!

 映画のテーマは「夫婦関係」なのだろうが、そのテーマ以外のところに映画の見どころがあると思う。それは劇中に描かれる、悠々自適のオシャレな田舎暮らしだ。小川のそばに建てられた古い民家での暮らしの、なんと心地よさそうなことか。古いかまどで、羽釜で炊くご飯。家庭菜園で育てた季節の野菜を中心にした、美味しそうなお総菜の数々。この映画を観て、田舎暮らしに憧れる人が増えそうだ。

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2月2日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ショウゲート 宣伝:P2
2012年|2時間11分|日本|カラー|ビスタサイズ|5.1chサラウンド
関連ホームページ:http://www.kiiroizou.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:きいろいゾウ(西加奈子)
主題歌CD:氷の花(The Gospellers)
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