ゾンビデオ

2012/11/20 サンプルDVD
東京にゾンビが現れたとき武器になるのは1本のビデオだった。
ゾンビ映画への愛にあふれたコメディ映画。by K. Hattori

Zombideo  都内の小さな映像製作会社で働くアイコは、仕事で古いビデオテープの山を整理している途中、ずいぶん昔に作られた1本のビデオテープを見つける。「ゾンビ学入門」と題されたそのビデオは、日本にあふれるゾンビたちからどのように身を守るかを、豊富な実例を交えながら解説するハウツーものの体裁になっていた。ゾンビ映画をこれまで300本は観たと豪語する同僚の橋下は、知られざるゾンビ映画の発見に興奮気味。映像の保存状態や内容から、この作品が作られたのは1970年代らしい。にも関わらず、スプラッタ描写はかなりリアルに作り込んでいる。一体誰がいつこんな作品を作り、しかも外部に公開されることなく会社の倉庫に眠っていたのだろうか? そう不思議がっていた矢先、会社に入ってきた男に社長が食い殺されてしまった。本物のゾンビの出現だ! アイコと橋下は「ゾンビ学入門」の手引きに従ってゾンビを撃退するが、やがて彼らはこのビデオに隠された歴史の真実を知るのだった……。

 『細菌列島』や『怪談新耳袋 殴り込み!劇場版』の村上賢司による、手作り感満載の和製ゾンビ映画。脚本はマンガ家でもある河井克夫のオリジナルで、マニアックなゾンビ映画の蘊蓄は「ゾンビ映画大事典」「ゾンビ映画大マガジン」の伊東美和の監修によるものだろう。パロディ色の強いコメディ映画ではあるが、これは日本産のニューウェーブ・ゾンビ映画として、日本ゾンビ映画史に残る作品になると思う。見どころは、異色の女お笑い芸人・鳥居みゆきがゾンビたちのリーダーに扮していること。ゾンビでありながら人間としての知能を失わず、他のゾンビたちを率いて人間への復讐を目指すというイカレた役なのだが、この人はもともと美形でスタイルもいいので、このゾンビ役も他のゾンビ映画にないスタイリッシュなゾンビになっている。復讐に燃える女ということで、服装は『女囚さそり』の梶芽衣子のような黒いコートとつばの広い黒い帽子姿。これで人肉への渇きを癒すために、ビーフジャーキーをくちゃくちゃ噛みながら歩くのだ。

 物語のベースは「突然現れたゾンビから逃れるため、主人公たちが戦う」という王道パターンなのだが、この映画はそこに「40年前の事件」「日米の密約」「対ゾンビ対策の秘密ビデオ」「40年前にゾンビとして捕らえられた女の復讐」「ゾンビの進化」といったアイデアを盛り込み、他のゾンビ映画にはないユニークな世界観を作りだしている。話には未整理なところも多いし、絵作りにも弁解できない安っぽさがあったりするが、こうしたB級やC級のテイストこそが本来のゾンビ映画であるようにも思う。

 ゾンビ映画が好きな人は、誰しも「自分だけのゾンビ映画」を作ってみたいと夢見るに違いない。この映画はそんなゾンビ映画好きの妄想が実った作品であり、作り手の「ゾンビ愛」の結晶なのだ。

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12月29日公開予定 ユーロスペース(レイトショー)
配給:キングレコード 宣伝:太秦 宣伝協力:アルシネテラン
2011年|1時間17分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.zomvideo.com
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