映画スマイルプリキュア!

絵本の中はみんなチグハグ!

2012/11/11 楽天地シネマズ錦糸町(スクリーン4)
プリキュアたちが絵本の国で魔王と戦い大冒険する長編版。
劇場でこそ味わえる感動がある。by K. Hattori

Puricure2012  人気テレビアニメ「スマイルプリキュア!」の劇場版長編。主人公たちが「世界絵本大博覧会」で出会った不思議な少女ニコに招かれ、絵本の世界に入り込んで大冒険を繰り広げるという話だが、登場する絵本の主人公や登場人物というのが、シンデレラ、桃太郎、浦島太郎、一寸法師、孫悟空というのがちょっと気にくわない。これは「絵本」の主人公ではなく、「おとぎ話」や「童話」の主人公ではないか。もちろんそうした童話をモチーフにした絵本はたくさん出ているが、絵本というのは絵と物語がより密接につながりあっているものだ。例えば「はらぺこあおむし」や「ぐりとぐら」を、別の絵にしてしまうことは考えられないはずだ。それに対して、シンデレラや桃太郎はどうか。これは同じ物語から何十種類もの絵本が発行されている。要するにこれらの物語の主人公は、純粋な意味では「絵本の主人公」とは言えないのだ。

 などと映画の本筋には直接関係ないところに茶々入れしたが、作品のでき自体には満足している。「何があっても決してあきらめない」「友だちを裏切らない」「最後はハッピーエンド」という作品世界のセオリーがきちんと押さえられていて安心できるし、良心の声に従って敵対したものが和解するとか、悪者が最後に改心して友だちになるとか、ストーリー展開はとても道徳的で教訓的。勧善懲悪ではあるが、罪を憎んで人を憎まず。悪は滅びても、悪人を滅ぼし尽くすことはない。要するに世間のお父さんお母さんが、安心して子供に見せられる映画になっている。それでいて説教くさい映画にならないのは、スタイルとして徹底的なアクション・バトルの体裁をとっているからだ。

 映画館でこの映画を観る楽しみは、劇中に観客参加型のイベントが仕込んであること。入場する子供には「ミラクルつばさライト」という小型ライトが配布され、劇中で主人公たちがピンチになると、このライトを使って観客から主人公たちを応援することができる。いつどのタイミングでライトを点灯するかは、映画の中で登場キャラクターから観客に指示がある。この合図に合わせて劇場内にパーッと明かりが広がっていく様子はじつに感動的だ。残念なのはこのライトをオトナには配布してくれないことで、多少の費用がかかってもいいから、大人にもこのライトを配布してほしい。劇場内が明るくなって映写効果が落ちるというデメリットもありそうだが、観客にはそれ以上の感動が絶対にあるはずなのだ。

 主人公のみゆき(キュアハッピー)に裏切られ忘れ去られたと感じたニコちゃんが、みゆきを恨み、憎み、その怨念から魔王と共に世界を憎悪に染め上げていこうとするという物語。これはもちろんファンタジーではあるのだが、「自分はないがしろにされている」「約束したのに裏切られた」というニコちゃんの気持ちは、子供たちにとってリアリティのあるものだと思う。

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10月27日公開 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:東映
2012年|1時間12分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.precure-movie.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:映画スマイルプリキュア!絵本の中はみんなチグハグ!
主題歌CD:映画スマイルプリキュア!絵本の中はみんなチグハグ!
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