ゲットバック

2012/10/25 シネマート六本木(スクリーン3)
マルティグラで賑わうニューオリンズを舞台にした犯罪映画。
テンポがよく安心して観られる。by K. Hattori

Getback  ウィル・モンゴメリーにとって、金庫破りは趣味と実益を兼ねる堅実な商売だった。入念な計画と信頼できる少人数のチームを武器に、警察や警備装置の裏をかいて銀行や取引所の堅牢な金庫に挑むのだ。だがある銀行を襲った際、長年チームを組んできたヴィンセントがトラブルを起こしたことからウィルは逃走に失敗。金庫から奪ったばかりの1,000万ドルを抱えたまま警察に追われ、ついに逮捕されることになった。だが逮捕された時、ウィルの手もとから現金は消失している。8年後に彼が刑務所から出てくると、警察はウィルが逮捕直前に隠したと思われる現金を探して動き出す。動き出したのは警察だけではない。かつての仲間ヴィンセントはウィルの娘を誘拐し、自分に分け前を寄こさなければ彼女を殺すと脅迫する。だがウィルには金がない。彼は逮捕される直前に少しでも罪を軽くしようと、証拠品となる紙幣の束をそっくり燃やしてしまったのだ。

 ニコラス・ケイジ主演のアクションサスペンス映画で、監督は『コン・エアー』でもケイジと組んでいるサイモン・ウェスト。やくざな稼業を捨てて堅気に戻ろうとした男が、昔の仲間の策略で再び悪の道に舞い戻るというお決まりの筋立てだが、主人公と疎遠になっていた娘との和解や、主人公を追う立場でありながら彼の人柄に一目置いている老刑事の存在など、全体の枠組みとしては人情ドラマっぽいところがあって印象は軽やか。これは「ルパン三世」みたいな世界なのだ。頭脳明晰で行動も大胆。次々に大きな仕事を成功させる大泥棒。彼の強みも弱味も知り尽くし、彼を出し抜こうとする卑劣な男の罠。大泥棒の逮捕に情熱を傾けながら、その「泥棒の美学」に惚れ込んでいるベテラン刑事。大泥棒と一定の距離を置きながら、いざという時は頼りがいのあるパートナーへと変身する美女。卑劣な男は、泥棒と関わりのある少女を誘拐して揺さぶりをかける。あ、なんかこうやって要素だけ整理していると『カリオストロの城』みたいだけど、ストーリーも展開もまったく別物ですので念のため……。

 サスペンス映画としては敵役に甘さがあり、映画全体にピリッとした締まりがない。これは敵役のヴィンセントを演じたジョシュ・ルーカスの個性もあるが、主人公ウィルが出所して来るまでの間、さんざん苦労し痛みを味わったヴィンセントに同情してしまうからだ。彼には追い詰められた弱者の悲哀がある。極悪非道な悪党が卑劣な暴力で主人公を追い詰めているわけではなく、犯罪以外の方法では生きられない男が、苦しんで苦しんだ挙げ句に起死回生の夢を見ているのだ。彼はウィルの娘を誘拐するが、殴ったりレイプするなど非道なことはしない。最後は金を持っていないというウィルの言葉を信じ、ならばどこかで金を調達してこいと言う。彼はウィルを裏切っても、やはり最後までウィルを信頼している。基本的には、悪い奴じゃないのだ。

(原題:Stolen)

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11月10日公開予定 新宿ミラノ、渋谷東急ほか全国ロードショー
配給:日活 宣伝:マンハッタンピープル
2012年|1時間35分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ステレオ、5.1ch
関連ホームページ:http://www.getback-movie.com
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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