ザ・レイド

2012/09/27 角川映画試写室
麻薬王のアジトに突入した警官隊の死闘を描くアクション映画。
アクションシーンは文句なしの迫力だ。by K. Hattori

Theraid  ジャカルタのスラム街にある古びた鉄筋高層アパート。そこは麻薬王タマ・リヤディの本拠地であり、警察もうかつには手を出せない犯罪者たちのサンクチュアリだった。しかしある朝ついに警察は動き出す。20人の警察特殊部隊が、リヤディのアパートを強襲したのだ。だが警察の手入れを予期していたリヤディは、警官隊に対して周到な罠を仕掛けていた。周囲との連絡を遮断されて孤立無援となった警官隊たちは、リヤディを守る犯罪者たちに次々血祭りに上げられてしまう。からくも生き延びた新人隊員ラマを含む警官たちは、脱出の道を探って建物内部を逃げ回る。果たして彼らは無事に脱出することはできるのか?

 「自分はこれまでに、インドネシア映画なんて観たことがあっただろうか?」などと映画の内容とは直接関係ないことを考えながら観始めたのだが、映画が始まるとそうした余計な考えは一気に吹き飛んでしまった。出撃前の警官たちがイスラムの祈りを捧げる冒頭のシーンなどは、「インドネシアは確かにイスラム圏なのだなぁ」などと考えながら観ていたが、警官たちが麻薬王のアパートに突入してからは、スリルとサスペンス、そして徹底したノンストップアクションだ。これはすごかった。狙撃手が見張りの警官をあっさり片付けた後は、銃弾が雨あられと降り注ぐガンアクション。さらにナイフや山刀をぶんぶん振り回す立ち回りになり、最後は手足を武器にした肉弾戦闘。インドネシアの格闘技プンチャック・シラットをベースにしたというアクションシーンは、香港映画のカンフーアクションに比べると、圧倒的に手数が多くてスピーディだ。同じようにスピードのあるアクションは、韓国映画『アジョシ』でも観ている。『アジョシ』でもアクションシーンの演出には、シラットの要素が盛り込まれているとのこと。『アジョシ』のアクションに驚嘆した人は、ぜひこの『ザ・レイド』も観てみるといいと思う。

 物語の構造そのものは結構単純で、精緻なアクションの組み立てに比べると拍子抜けするぐらいにあっけない。基本的には面クリアゲーム型で、ひとつのステージが終わると次のステージに移動するという形式で次々に強力な敵と対戦し、最後はラスボスとの戦いになって終わる。主人公が滅法強い格闘センスを披露してくれるが、それに見合うだけの強烈なキャラクターにはなっていないのが少し残念。妻が妊娠中で間もなく父親になるというオイシイ設定があるのに、これが物語の後半であまり生かされていない。麻薬王の部下でマッド・ドッグ(狂犬)の異名を持つ男が、あだ名通りのエネルギッシュないかれっぷりを見せつけたのに比べると、頭脳派とされるもう一人の部下はいまひとつ影が薄く、これでなぜ組織のナンバー2になれたのかが不思議だ。アクションは一級品だが、脚本の上ではまだ粘る余地があったのではないかと思われる。もっともそれによって、映画がこれ以上に面白くなったのかどうかは疑問だけど……。

(原題:The Raid: Redemption)

Tweet
10月27日公開予定 シネマライズ、角川シネマ有楽町
配給:角川映画
2011年|1時間42分|インドネシア|カラー|ビスタサイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.theraid.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連商品:商品タイトル
ホームページ
ホームページへ