ウーマン・イン・ブラック

亡霊の館

2012/09/07 松竹試写室
『ハリポタ』のダニエル・ラドクリフ主演のゴシックホラー。
古い屋敷で若い弁護士が幽霊に出会う。by K. Hattori

Wib  『ハリー・ポッター』シリーズが一段落したダニエル・ラドクリフが、『ハリポタ』以降に初めて出演した映画は古風なゴシックホラーだった。『ハリポタ』で少年から青年へと成長していく主人公を演じた彼が今回挑むのは、幼い息子を抱える若い父親役だ。10年がかりでハリー・ポッターに付き合った人たちにとっては、ちょっと感慨深い映画だと思う。なお本作『ウーマン・イン・ブラック』はイギリスで公開されるや大ヒットを記録し、過去20年間にイギリスで製作されたホラー映画の中で最大の興行成績を上げたとのこと。既に続編の製作が確定しているのだが、それにラドクリフが出演するかどうかは微妙。何しろ続編は本作の40年後が舞台になっているというのだから……。

 20世紀初頭のイギリス。ロンドンの法律事務所に勤める若い弁護士アーサーは、4年前に愛妻ステラを亡くしてから生活が荒れて仕事に身が入らず、職場の上司から最後のチャンスに新しい仕事を命じられる。それは田舎町クライシン・ギフォードにあるイール・マーシュの屋敷で、遺品を整理すること。一人息子のジョセフをロンドンに残してクライシン・ギフォードにたどり着いたアーサーだったが、村の人たちはあまりアーサーを歓迎していない様子だ。地元の弁護士はアーサーにわずかばかりの書類を手渡すと、そのままロンドンに帰れとけしかける。だがこの仕事にクビがかかっているアーサーは、こんなことでロンドンに帰るわけには行かない。彼はたったひとりで古い屋敷に乗り込んでいくが、そこで出会ったのはこの世の者ではない何者かだった。その直後から村では子供たちが次々変死する事件が起き、村人たちはそれをアーサーのせいだと責め立てるのだった……。

 ロンドンの弁護士が遠く離れた田舎町に出かけ、そこで人知を超えた怪異に出会うという物語の導入部はゴシックホラーの古典「吸血鬼ドラキュラ」と同じだ。「ドラキュラ」では弁護士のレンフィールドがドラキュラ伯爵に魅入られてその下僕となり、ロンドンに帰還してから様々な怪奇現象を巻き起こしていくが、『ウーマン・イン・ブラック』では主人公の弁護士がまったくその自覚なしに幽霊に取り憑かれ、彼の周囲で次々に怪事件が起きるという設定になっている。幽霊が人間を殺すのではなく、幽霊にマーキングされた人間(幽霊を見た人間)に接触した者が殺されるというアイデアが面白い。

 物語の筋立ては鈴木光司のホラー小説「リング」に似ているが、この映画の原作は「リング」より先に出て邦訳も出版されているので、ひょっとすると鈴木光司はそれを読んでから「リング」を書いたのかもしれない。もっとも本作は演出面で何本かの日本製ホラー映画を参考にしているというから、演出テイストの類似性がストーリーの共通項をより強調することになっているのかもしれない。続編もちょっと楽しみだ。

(原題:The Woman in Black)

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12月1日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ブロードメディア・スタジオ 宣伝:ティー・ベーシック
2012年|1時間35分|イギリス、カナダ、スウェーデン|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.womaninblack.jp
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:Woman in Black
原作:黒衣の女 ある亡霊の物語(スーザン・ヒル)
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