トータル・リコール

2012/08/08 SPE試写室
フィリップ・K・ディックの短編小説を映画化したSFアクション。
1990年に製作された同名映画の再映画化。by K. Hattori

Totalrecall  1990年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演で映画化されているフィリップ・K・ディックの短編小説「トータル・リコール(追憶売ります)」を、コリン・ファレル主演で再映画化したSFアクション映画。ディックの原作にさかのぼって新たな脚本を書いたわけわけではなく、今回の映画はシュワルツェネッガー版の『トータル・リコール』を下敷きにしている。そのため、ロナルド・シャセット、ダン・オバノン、ジョン・ポヴィルなど、1990年版に参加した脚本家たちの名前がクレジットされている。

 物語の舞台は近未来の地球。工場労働者として平凡な暮らしをするダグラス・クエイドは、余暇も娯楽もない日常から逃避するため、リコール社で偽の記憶を買うことにする。リコール社で疑似記憶をインプットしさえすれば、本物の体験と変わらない波瀾万丈の冒険が可能になるのだ。だがリコール社で大物スパイとしての記憶を注入しようとしていたダグを、突然大勢の武装警官が襲った。なんとか脱出に成功して自宅に戻った彼に、今度は妻のローリーが襲いかかる。彼女によればクエイドは本物の大物スパイであり、自分はその監視役として彼と暮らしを共にしていたというのだ。二人が暮らし始めたのはほんの数週間前で、それ以前の結婚生活はすべて植え付けられた偽の記憶だという。ダグは何もわからぬままにその場を逃げ出し、ブリテン連邦によるコロニー侵略の陰謀と、それに抵抗するレジスタンスたちの争いに巻き込まれていくのだった……。

 状況設定などは多少変更してあるものの、物語の流れや人物配置は1990年版の映画に沿っている。ただしオリジナル版で筋骨隆々のアーノルド・シュワルツェネッガーが演じた主人公を中肉中背のコリン・ファレルが演じるので、映画の雰囲気はだいぶ違ったものになる。前作で偽の妻ローリーを演じたのはセクシー美女のシャロン・ストーンだったが、今回はシャープなアクションに定評のあるケイト・ベッキンセールになった。僕が1990年版で一番納得できなかったのは、主人公の恋人メリーナを演じたレイチェル・ティコティンにまったく魅力を感じなかったことなのだが、今回のリメイク版では同じ役がジェシカ・ビールになった。前作では「いっそ騙されたままシャロン・ストーンと夫婦のままでいた方がいいんじゃない?」と思ったものだが、今回の映画はその点が改善されている。

 映画の見どころはアクションシーン。ベスト3はコロニーのスラム街で主人公が警官隊から逃げる、ブリテン連邦でホバーカーを使ったカーチェイス、キューブ型のエレベーターを使った追いかけっこなど、どれも主人公が偽妻のローリーから逃げ回る場面ばかり。ケイト・ベッキンセールはレン・ワイズマン監督の妻でもあり、これらのシーンには監督の「妻から逃れたい」という願望が反映しているんだったりして……。

(原題:Total Recall)

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8月10日公開 丸の内ピカデリー他全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2012年|1時間58分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、SR*D
関連ホームページ:http://www.totalrecall.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
オリジナル版DVD:トータル・リコール(1990)
原作:トータル・リコール (ディック短篇傑作選)
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