カルロス

2012/08/06 松竹試写室
国際テロリスト「カルロス」の半生を描く実録映画。
3部作のうち第2部までを観た感想。by K. Hattori

Carlos  冷戦時代に活動した国際的テロリストとして悪名高かったカルロスことイリイッチ・ラミレス・サンチェスのテロ人生を、オリヴィエ・アサイヤス監督がエドガー・ラミレス主演で映画化したアクション大作。テレビのミニシリーズとして企画製作された作品だが、画面サイズはシネマスコープで、最初から劇場公開を視野に入れた作品になっている。テレビ版は第68回ゴールデン・グローブ賞でテレビ部門の作品賞を受賞しており、日本でも「コードネーム:カルロス 旋律のテロリスト」というタイトルでWOWOWで放送済みだ。

 今回は事情があって全3部作のうち、中盤の第2部までしか観られなかったので、その上での感想になる。物語は1973年6月のパリで、テロ組織のリーダーが爆殺される場面で幕を開ける。これで欧州におけるテロ組織の拠点のひとつが破壊されたわけだが、その穴を埋めようとPFLP(パレスチナ解放人民戦線)に自ら売り込んできたのがカルロスだ。ロンドンで有力なイスラエル支持者を襲撃してテロリストとしての実績を作ったカルロスは、PFLPと連帯する日本赤軍を支援する仕事や、オルリー空港でのテロ事件を支援。しかし仲間のひとりが警察に逮捕され簡単に口を割ってしまったことから、パリの潜伏先に踏み込まれ、そこで警官を射殺して逃走する。次にカルロスに与えられたのは、オーストリアで開かれるOPEC総会を襲撃して要人を暗殺する仕事だった。(ここまでが第1部。)OPEC総会を襲撃して各国代表を人質に取り、飛行機で脱出することに成功したカルロスたちだったが、計画は思うとおりには進まず、肝心の暗殺が果たせないまま身代金を受け取って人質たちを解放するに留まった。これがPFLP幹部の怒りを買い、カルロスは組織から離れて独自の活動を始めるようになる。カルロスに持ち込まれる新たな仕事は、エジプトのサダト大統領暗殺だ。カルロスは欧州のテロ組織のメンバーたちと連絡を取りながら、シリアと接近してゆく。(ここまでが第2部。)

 映画はカルロスにまつわる裁判記録、当事者たちの手記やインタビュー、報道記事などをもとにしているが、それらを再構成したフィクションだと最初に断りが入る。登場人物たちの内面に深く入り込まず、事実だけを淡々と描写してゆくドキュメンタリータッチの演出で、カメラが実際の現場に居合わせているような臨場感がある。しかし登場人物たちに対する感情移入はしにくい。パリでカルロスが警官たちを射殺するエピソードでは、運悪く事件に遭遇してしまった警官たちに同情するほどだ。

 同時代のテロリストを主人公にした実録映画はたくさん作られているが、この映画がその中でも一番の大作。しかしテロ事件の一覧性という点では見応えがあっても、人間ドラマとしてはいまひとつだ。たぶん作り手の側に、テロリストの掲げる「正義」や「理想」や「使命感」に対する共感がないのだろう。

(原題:Carlos)

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9月1日公開予定 シアター・イメージフォーラム、吉祥寺バウスシアター
配給:マーメイドフィルム 宣伝:VALERIA 宣伝協力:boid
2010年|1時間41分、1時間47分、1時間58分|フランス、ドイツ|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://www.carlos-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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