コッホ先生と僕らの革命

2012/07/26 シネマート六本木(スクリーン1)
ドイツにサッカーを紹介したコンラート・コッホの伝記映画。
これは学園青春ドラマの世界だ。by K. Hattori

Kohhosense  サッカーは今や世界で一番人気があり普及しているスポーツのひとつだが、スポーツとしてのサッカーが誕生したのは1860年代のイギリスだった。1863年イングランドに世界初のサッカー協会(フットボール・アソシエーション)が設立され、この協会ルールに沿った競技を「アソシエーション・フットボール」と呼ぶようになった。「アソシエーション(association)」の略称「soc」に「er」を付けたのが「サッカー」という競技名のルーツだとされている。この映画『コッホ先生と僕らの革命』は、サッカー誕生から10年ほど後の1874年、ドイツで初めてサッカーのルールブックを出版たコンラート・コッホを主人公にした映画だ。コッホは実在の人物だが、映画はコッホの「ドイツにサッカーを紹介した教師」という人物設定を借りたオリジナル・ストーリー。しかしこれもまた、昔ながらの伝記映画のひとつのスタイルだろう。

 普仏戦争に勝利して誕生した統一ドイツは、ヨーロッパのもうひとつの大国であるイギリスに対する対抗意識に燃えていた。そんな中、ブラウンシュヴァイクにある名門カタリネウム校に、ひとりの青年教師が赴任してくる。同校の卒業生でイギリスに留学していたコンラート・コッホが、英語教師として招かれたのだ。彼は堅苦しいドイツ式の授業スタイルや、庶民階級の生徒を露骨に差別する生徒たちの様子を見て、授業にサッカーを取り入れる。サッカーによって身体を動かしながら生きた英語を学ぶと共に、チームメイトとして階級意識を消し去ろうと考えたのだ。コッホの英語授業は生徒たちに大受けするが、これを快く思わない他の教師や保護者たちから、コッホは大バッシングを受けることになってしまう。

 ドイツ版『いまを生きる』というのが映画のキャッチフレーズになっているが、型破りの青年教師が学校の問題児たちをスポーツでまとめ上げるという物語の筋立ては、日本で古くからお馴染みの学園青春ドラマのパターンだ。「青春とはなんだ」や「これが青春だ」を起点とする東宝青春シリーズや、実話をもとにした「スクール☆ウォーズ」などを見ていた人には、懐かしい雰囲気の映画だと思う。若い教師は自分の理想とする教育で生徒たちの支持を得るが、学校運営を上牛耳る町の名士はこれに反発して主人公を潰そうと画策し、学校長は両者の板挟みになって苦しむという人間関係。生徒たちも思春期の少年として、いろいろな問題を抱えている。父の権威を笠に着て教室のボスになっている生徒もいれば、貧しい庶民階級から家族の期待を受けて名門校に入学した結果、イジメのターゲットになっている生徒もいる。もちろん生徒の初恋にからんだ甘酸っぱいエピソードも。

 学園ドラマとして定番のパターンを踏襲しているので、安心して観られる反面、先の展開が読めてしまうのが弱点。しかし主演のダニエル・ブリュールが、青年教師コッホを爽やかに演じている。

(英題:Lessons of a Dream)

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9月15日公開予定 TOHOシネマズ シャンテ
配給:ギャガ パブリシティ:スキップ、フラッグ
2011年|1時間54分|ドイツ|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.imdb.com/title/tt1686768/
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