WIN WIN

ダメ男とダメ少年の最高の日々

2012/07/25 シネマート六本木試写室(スクリーン3)
ポール・ジアマッティ主演のヒューマン・コメディ映画。
監督・脚本はトム・マッカーシー。by K. Hattori

Winwin  ニュージャージーの小さな町で弁護士事務所を開いているマイク。不況ですっかり仕事が減って、今では古くからのなじみ客の話し相手になったり、裁判所から斡旋された小さな仕事で糊口をしのいでいる状態だ。だがそんな仕事では、事務所の家賃も払えない。事態が好転するめども付かないまま、マイクは事務所の台所事情を家族に話せずにいる。そんな彼が裁判所からの紹介で担当したのが、認知症を患う老人レオの身辺整理だ。彼の後見人になれば月額1500ドルの報酬が得られる。マイクはレオの後見人に名乗り出て事務所の財政危機を救うが、レオとの約束を破って彼を養護施設に入れてしまう。だがその直後、レオを訪ねてカイルという少年がやってくる。麻薬中毒の母に見捨てられ、他に行くあてがないというカイルを、マイクはしばらくのあいだ自宅に泊まらせることにする。しかし無口でいつもつまらなそうな顔をしているカイルには、驚くべき才能があった。彼はレスリングの天才なのだ。地元高校で弱小レスリング部の監督をしているマイクは、カイルを転校させてレスリング部に入部させるのだった。

 監督・脚本は『扉をたたく人』のトム・マッカーシーで、主人公マイクを演じるのはポール・ジアマッティという映画。配役も地味だが、物語の中で大きな事件が起きるわけでもない地味な映画。しかし不況で仕事がないのに家族にそれを打ち明けられないという主人公の境遇には、多くの人が同情するのではないだろうか。マイクは悪人ではなない。高校時代にはレスリング選手として活躍し、学業成績も優秀で弁護士資格を取得し、地元に小さな自前の事務所を開いてからも、顧客との関係を大切にしながらコツコツと今の生活を築いてきた男だ。しかしそんな彼が、経済的なプレッシャーからつい出来心でクライアントの後見人報酬をごまかすような間違いをしでかす。そのままならたぶん誰も気づかない小さなごまかしだったが、そこにクライアントの家族がひょっこり現れたことで状況が複雑化していくのだ。

 マイク以外の登場人物たちも、基本的には悪くない人ばかりだ。ただしマイクと同じく、人間らしい弱さは誰もが持ち合わせている。カイルの母は麻薬中毒だが、それは彼女が悪人であることを意味してはいない。彼女も子供のことは愛しているのだが、彼女の持つ弱さがそれを台無しにしてしまう。彼女が金にこだわるのは、金にがめついためではない。マイクと同じく、彼女も自分の生活を建て直したくて必死なのだ。

 コミカルなシーンも多く、シリアスな話ではあるが映画の印象は軽やか。カイル役のアレックス・シェイファーはレスリング経験があるということで抜擢された新人だが、不思議なカリスマ性があって主演のジアマッティや祖父役のバート・ヤングといった大物相手に一歩も引けを取らない存在感を見せている。

(原題:Win Win)

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8月18日公開予定 シネマート新宿
9月公開予定 シネマート心斎橋
配給:エスピーオー 宣伝:Playtime
2011年|1時間46分|アメリカ|カラー|ビスタ
関連ホームページ:http://video.foxjapan.com/win2-movie/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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