放課後ミッドナイターズ

2012/07/22 アキバシアター
真夜中の学校を舞台にしたホラー風味のドタバタコメディ。
脚本をもう少し掘り下げてほしい。by K. Hattori

asm  キリスト教系の名門小学校として知られる聖クレア小学校。入学予定者向けの校内見学会で、3人の幼稚園児の女の子が改装中の理科室に迷い込む。そこにあるのは理科室で長年使われた標本や実験器具など。子供たちは人体模型にいたずら書きするなど、乱暴狼藉の限りを尽くして立ち去っていく。その夜、人気のなくなった理科室では人体模型のキュンストレーキ(愛称はキュンさま)が怒り狂っていた。あの女の子たちを許してはおけない。復讐するのだ! 彼は自分の主催する恐怖のミッドナイトパーティに彼女らを招き、徹底的に恐がらせることを考えるのだが……。

 映像作家の竹清仁が2010年に発表した短編アニメ「放課後ミッドナイト」をベースにした、新作長編アニメーション映画。脚本は『海猿』の原案作家であり、映画『252 生存者あり』の原作脚本を担当している小森陽一。ベースになった短編アニメは未見だが、夜の学校に現れるモンスター(あるいはゴースト?)は個性的だし、スピード感のある映像は見ていて面白い。ただし物語の筋運びには、映像ほどの個性がないし、スピード感も欠けている。決定的な弱点は、物語の中で複数の異なったストーリーを同時進行させながら、それが必ずしもうまくからみ合っていないことだ。

 物語の中では複数の課題が設定されている。まず第1に廃棄処分が決まっている人体模型と骨格標本が、いかにしてその運命を逃れるかという重大問題。第2に彼らがいかにして幼稚園児に復讐するかという問題。第3に学校に古くから伝わる3つのメダイの探索ミッション。第4に学校内を徘徊する不気味な黒い影の正体。第5にトイレに封印されていた恐るべきモンスターの出現。映画の中で中心になり、一番ボリュームが大きいのは、3つのメダイの探索ミッションだ。メダイを集めて願い事を叶えられるのは人間だけだという設定上のしばりを作ったことで、幼稚園児たちが物語の中心に出てきたのはいい。しかし幼稚園児たちへの復讐と、子供たちに協力してメダイを集めさせなければならないという矛盾した役割の間で、物語が中途半端なものになってしまっていないだろうか。

 映画の中にはいろいろなアイデアがぎっしり詰め込んであるのだが、それらがほとんど未消化なままに終わっているのが残念。人体模型のキュンさまが作った数々の発明品にしろ、3つのメダイを巡るミッションにしろ、タイムトラベルにしろ、もっとアイデアを掘り下げればそれぞれまだ3倍は面白くなっただろうに。幼稚園児3人組は他のモンスターやゴーストのキャラクターに比べると、いかにも紋切り型で没個性的だ。ここにいるのは「個性的な子供」という類型的なキャラであって、その中身に血が通っていないのだ。映像が面白いので最後まで飽きることはないが、このようなアイデアの羅列だけで1時間半は少々長い。この内容なら70分(ぎりぎり長編の長さ)もあれば十分だっただろうに。

Tweet
8月25日公開予定 新宿バルト9
配給:ティ・ジョイ 宣伝:ヨアケ、フリーストーン・プロダクションズ
2012年|1時間34分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
主題歌CD: Re:myend!/Lightdentity(ねごと)
ホームページ
ホームページへ