ジェーン・エア

2012/03/13 シネマート六本木(スクリーン4)
シャーロット・ブロンテの原作を映画化した波瀾万丈のドラマ。
主演はミア・ワシコウスカ。by K. Hattori

Janeeyre  シャーロット・ブロンテの長編小説「ジェーン・エア」は1847年に発表され、無声映画の時代から何度も映画化されてきた。よく知られているのはジョーン・フォンテーンとオーソン・ウェルズが主演したロバート・スティーヴンソン監督版や、シャルロット・ゲンズブールが主人公を演じたフランコ・ゼフィレッリ版だろうか。イギリスのBBCがTVミニシリーズに仕上げたものも評判が良い。IMDbによれば、今回の映画はテレビ用のミニシリーズなども含めて20本目の映像化作品になるようだ。

 主人公ジェーンを演じているのは、『アリス・イン・ワンダーランド』や『キズ・オールライト』のミア・ワシコウスカ。相手役のロチェスターを演じるのは『SHAME -シェイム-』のマイケル・ファスベンダー。ロチェスター家の女中頭フェアファックス夫人をジュディ・デンチが貫禄たっぷりに演じ、ジェーンを助ける若い牧師セント・ジョンを『第九軍団のワシ』のジェイミー・ベルが演じている。監督はキャリー・ジョージ・フクナガ。父方の祖父が日本人という日系人監督だ。

 僕は原作も読んでいなければ過去の映像作品も見ないまま今回の映画を観たのだが、ストーリー自体はきちんと把握することができた。ただし導入部でストーリーの順序を入れ替えて回想形式にした部分は、この映画ではあまり生かされていないと思う。マヅルカ形式にすることで物語の序盤をかなり大胆にカットすることができるのだが、この映画の場合はかえって話のつながりが見えにくくなってしまったのではないだろうか。物語のつながりが出るのは映画終盤で回想が導入部のシーンに追いついてからで、この後は話があっと言う間に終わってしまってひねりがない。ジェーンがロチェスター家から逃れてセント・ジョンに救出される場面から映画を始めるのは、確かにドラマチックではあるだろう。だがこうした大河ドラマの場合は、どこから物語を始めることも可能なはず。時系列に物語を進行させて「○年後」で飛ばしていってもいいし、ジェーンが寄宿学校に入学するところから始めても、学校を出てロチェスター家にやって来るところからでも、ロチェスター家が火災で焼け落ちる場面から物語を始めてもいい。こうした無数の開始点の中から、この映画の製作者たちはジェーンがセント・ジョンに出会う場面を選んだわけだが、この結果としてジェーンとセント・ジョンの出会いが物語の焦点になり、ロチェスターが脇に追いやられてしまっているのではないだろうか。

 衣装や美術は立派だし、ロケーション撮影も見事。俳優たちもがんばっている。しかしストーリーは駆け足で、大河ドラマのダイジェスト版という印象がぬぐえない。他の映画がどのように原作を脚色したかは知らないが、この映画については少なくともあと30分か1時間は上映時間が必要だったと思う。

(原題:Jane Eyre)

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6月2日公開予定 TOHOシネマズシャンテ
配給:ギャガ パブリシティ:アルシネテラン
2011年|2時間|イギリス、アメリカ|カラー|ビスタ|ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://janeeyre.gaga.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:ジェーン・エア
原作:ジェーン・エア(シャーロット・ブロンテ)
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