REC/レック3

ジェネシス

2012/03/12 アスミック・エース試写室
結婚式をぶち壊された花嫁がチェーンソー持って大暴れ。
スペイン製の人気ホラーシリーズ第3弾。by K. Hattori

Rec3  2007年にスペインで製作されたホラー映画『REC/レック』は、消防士を取材するテレビ番組制作スタッフが、偶然古びたアパートで起きた怪事件に直面してしまうという物語。全編を取材用カメラの撮影映像で押し通し、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』以来量産されてきたこのジャンルの中でも屈指の完成度を誇る作品となった。続編『REC/レック2』も2009年に製作されている。今回の映画はそこから少し間隔を空けてのパート3。ただし時間軸としては2作目の続きではなく、1作目と同時刻に別の場所で起きている事件という設定だ。だから1作目と2作目を観ていなくても、話自体はだいたいわかる。(僕は2作目を観逃しているが、特に大きな問題はなかったと思う。)

 バルセロナの教会に大勢の人々が集まる。今日はコルドとクララの結婚式なのだ。式の後は郊外のパーティ会場を借りきっての豪華な披露宴。だがそこで招待客のひとりが、突然ゾンビに変貌して周囲の客たちを襲い始める。ゾンビはあっと言う間に増えて、会場は瞬時にパニック状態に。この混乱の中で、新郎新婦は離れ離れになってしまった。会場内の小さなチャペルに避難したコルドは、館内放送で呼びかけるクララの声を聞いて妻の救出を決意。一方管理室にもゾンビが群がってきたことからクララはそこを脱出して、コルドとクララは再び離れ離れになってしまうのだった……。

 1作目と2作目でPOV(ポイント・オブ・ヴュー/見た目視点)を貫いていたシリーズだが、この3作目では映画の途中からそれを放棄する。継承しているのは同じ世界観だけで、映画のタッチもテイストもまるで別物に進化変質しているのだ。過去2作でパコ・プラサと共同で脚本と監督を勤めたジャウマ・パラゲロが、今回クリエイティブ・プロデューサーに退いていることも、映画のタッチが大きく変化した原因かもしれない。今回はパコ・プラサが単独で監督し、脚本は1作目にも参加していたルイソ・ベルデホとの共同になっている。撮影のパブロ・ロッソなど他の主要スタッフもそのまま継続参加しているようだが、そのわりにはずいぶん映画の雰囲気が様変わりした。

 この映画はサム・ライミの『死霊のはらわた』(1981)に対する『死霊のはらわた II』(1987)、もしくは『キャプテン・スーパーマーケット』(1993)みたいな作品だ。ハードでシリアスなホラー映画の続編が、恐さを通り越してコメディになってしまっている。作り手たちもそれを十分に意識しているのだろう。ヒロインのクララがチェーンソーで戦うのは『死霊のはらわた II』のオマージュにも思えるし、コルドが中世風の甲冑姿になるのは『キャプテン・スーパーマーケット』からの引用かもしれない。笑えるホラーを久々に観たので大いに満足なのだが、現在製作中の続編『REC 4 APOCALIPSIS』も気になるところだ。

(原題:REC3 Genesis)

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4月28日公開予定 シネマスクエアとうきゅう、ヒューマントラストシネマ渋谷
配給:ブロードメディア・スタジオ
2012年|1時間20分|スペイン|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.rec3.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:『REC/レック』シリーズ
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