マジック・ツリーハウス

2011/12/12 シネマート六本木(スクリーン4)
子供向けの人気ファンタジー小説シリーズをアニメ映画化。
原作は面白そうだが映画はイマイチ。by K. Hattori

Magictreehouse  メアリー・ポープ・オズボーンの「マジック・ツリーハウス」は、日本でも30巻まで翻訳発行されている児童向けの歴史読み物シリーズ。読書家のジャックと、冒険好きの妹アニーの兄弟が、木の上の魔法の家(マジック・ツリーハウス)を使って古今東西さまざまな時代や国にタイムトラベルする物語だ。この映画はその中から4つのエピソードを抜き出して、主人公たちが4つのミッションをクリアして魔術師モーガンにかけられた魔法を解く物語になっている。モーガンのフルネームはモーガン・ルー・フェイ(モルガン・ル・フェ)で、彼女に魔法をかけてネズミの姿にしてしまうのは魔術師のマーリン。彼等が暮らしている魔法の国の名前はキャメロット。つまりこの物語は、アーサー王物語から派生したものでもあるのだ。

 原作は1話完結型の連作シリーズで、主人公たち兄妹が毎回さまざまな時代のさまざまな場所に出かけて帰ってくるという内容。映画はそこから、恐竜時代、中世の騎士の城、ポンペイ最後の日、海賊の宝の島などを選んで、1本の映画にしている。ただしこの映画、ひどく物足りない。ひとつずつのエピソードに割く時間が短いため、描写が薄くなってしまっているのだ。主人公である少年少女が世界各地に時間旅行をして何らかの問題を解決するという話は、「タイムボカン」や映画版「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」などでお馴染みの設定。今回の『マジック・ツリーハウス』はそれに比べてだいぶ劣ると思う。やるなら徹底した時代考証で、歴史の中で営まれていた人間の暮らしを詳細に再現して、それを物語の中に生かしてほしいのに、それができないままだ。他の映画と比べても、例えば中世の城の描写はジャン・レノが出演した『おかしなおかしな訪問者』やその続編・リメイクなどのほうが濃密だっただろうし、マーティン・ローレンスの『ブラック・ナイト』も面白くできていた。ポンペイのエピソードに出てくる古代ローマ人の暮らしは、「テルマエ・ロマエ」の方が詳しく描かれている。海賊たちの様子に至ってはまるでリアリティがなく、これは史実の中の海賊たちと言うより、『ピーター・パン』に出てくる海賊フック船長の部下たちを真似たようなレベルにしか見えない。

 4つのエピソードをつなぐ現代の物語も中途半端。主人公たちも含めて家族全員が、どの場面でも常に同じ服装でいるというのも不自然。物理法則を無視した動きはアニメの特権だが、それでも「アニメの中のリアリティ」を無視した挙動には首をかしげるばかり。モーガンが魔法をかけられた理由もわからなければ、モーガンにかけられた魔法のためになぜ主人公たち兄妹が命がけで働かねばならないのかもわからない。子供が楽しめればそれでいいという考え方があるかもしれないが、「子供向けの映画」と「子供だましの映画」とは違うのだ。僕はこの映画を「子供だまし」だと思う。

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1月7日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ギャガ 宣伝:ドリーム・アーツ、共同PR
2011年|1時間45分|日本|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:http://magictreehouse.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
サントラCD:マジック・ツリーハウス
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