フラメンコ・フラメンコ

2011/12/01 ショウゲート試写室
カルロス・サウラが紹介する21組のアーティストたち。
克明に描写された迫真のパフォーマンス。by K. Hattori

Furamenko2  『血の婚礼』や『カルメン』などのフラメンコ映画で知られるカルロス・サウラ監督が、スペインの最新フラメンコを紹介した作品。21組のアーティストが次々に登場して、演奏や、歌や、ダンスを見せるという、ただそれだけの1時間41分だが、どのパフォーマンスも見応えがあって、映画を観終えたときはお腹いっぱいになれる。ストーリーのある劇映画ではなく、実際のアーティストをスタジオで撮影したドキュメンタリー作品だ。サウラ監督には同趣向の『フラメンコ』(1995)という作品が既にあるのだが、今回はその続編のような内容らしい。あいにく『フラメンコ』は未見なのだが、前作が『フラメンコ』で今回が『フラメンコ・フラメンコ』だから、次回作はきっと『フラメンコ・フラメンコ・フラメンコ』だろうと勝手に想像している。ただし15年に1本のペースで製作している映画だから、次の映画が作られるとしたら2025年。1932年生まれのサウラ監督は、それまで元気に映画を作っていられるだろうか。『フラメンコ』でも撮影を担当したヴィットリオ・ストラーロが1940年生まれだから、これも結構危ないかもしれないなぁ……。

 21組のアーティストが登場するが、僕が知っていたのはギタリストのパコ・デ・ルシアぐらいで、他はまったく不案内。もとより僕は、特にフラメンコが好きというわけでもないのだ。しかしそんな僕でも、ここで演じられているパフォーマンスがとんでもなくクオリティの高いものであることはわかるし、一見するとスタジオ内でのパフォーマンスをただ撮影しているだけのように見えて、じつは凝りに凝った撮影技術が用いられていることもわかる。1組のアーティストで1曲披露で、撮影は基本的に長めのショットを使ってパフォーマンスをたっぷりと見せている。ただしショットを細かく割ってクロースアップからロングショットまで瞬時に切り替えたり、クレーンやドリーを使ってアーティストのすぐ近くまでカメラがにじり寄ったり、逆に離れて行ったりする。カットの切れ目を考えると、アーティストたちはカメラの前で何度も同じ演奏を繰り返さねばならない場合もあっただろう。しかしそこに映し出されるパフォーマンスは、まったくテンションが落ちない。アーティストたちが観客のすぐ目の前で、1曲分のパフォーマンスを見せてくれたような緊張感が伝わってくる。ミュージカル映画やミュージックビデオの映像とはまったく違った、生々しいライブ映像の躍動感があるのだ。

 この映画を観ると、一口にフラメンコといっても内容は千差万別なことがわかる。歌、踊り、演奏のどれも、かなり幅広いものなのだ。映画には古典的な民謡からモダンなものまでが取り上げられているが、どれにも一貫して、フラメンコ特有のリズムやグルーブ感というものがある。これは音楽ファンなら見逃せない、現代フラメンコの最新カタログだろう。

(原題:Flamenco, Flamenco)

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2012年正月第2弾公開予定 Bunkamuraル・シネマ
配給:ショウゲート 宣伝:ザジフィルムズ
2010年|1時間41分|スペイン|カラー|1:1.85|SRD
関連ホームページ:http://flamenco-flamenco.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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