歴史は女で作られる

【デジタル・リマスター完全復元版】

2011/11/10 TCC試写室
歴史に名高い希代の悪女ローラ・モンテスの伝記映画。
最新技術で公開当時の映画を復元。by K. Hattori

Lola_montes   1955年に完成したマックス・オフュルス晩年の代表作が、デジタルリマスター完全復元版で公開される。この映画は公開時に興行結果がかんばしくなかったことから、プロデューサーが監督に無断で再編集し、エピソードの順序まで入れ替えて上映時間を大幅に短縮。このことに激怒した監督はその直後に死去し、『歴史は女で作られる』は呪われた映画となった。しかしこの映画を監督が意図した元の形に戻そうという試みは1960年代に行われ、1968年に一度復元版が完成して公開されている。今回公開されるのは、さらに広範囲に復元用の素材を探し、デジタル技術を使って退色した色を復元し、傷やホコリなどのゴミを取り去ったもの。これは2008年に完成してカンヌ映画祭で上映された後、各地で公開されたり映画祭で特別上映されたりしている。日本でも昨年2月に、「フランス映画特別上映」の一環としてホール上映されたそうだ。

 ヒロインのローラ・モンテスは実在した高級娼婦で、世界史の中ではバイエルン国王ルートヴィヒ1世退位の原因を作った愛妾として知られている。女性ひとりの存在で国が傾きかけたわけで、ローラは文字通りの「傾城」だったわけだ。映画は彼女が落ちぶれ果てて、サーカスで自分自身の人生を紹介するショーの主役になっている場面で幕を開ける。豪華絢爛な、しかし低俗な見せ物でしかないショーの中で、ローラは物見高い人々の好奇の目にさらされながら生きている。ショーの信仰に従って、彼女の回想シーンが物語に割って入ってくる。各界の著名人たちと浮き名を流した華やかな日々。そんな生活に入るきっかけとなった貧しい少女時代と、そこから逃れるために飛び込んだ不幸な結婚生活。しかし彼女はやがて踊り子として頭角を現し、バイエルン王国では国王ルートヴィヒ1世に見初められて彼の愛人となる。それは男をだまして世渡りしてきた女の、狡猾な手練手管によるものだったのか。それとも貧しい少女が夢見た、シンデレラストーリーの結末だったのか……。

 映画はローラに寄り添いながら彼女の人生をたどっていくのだが、その描き方は中途半端で煮え切らないものだ。彼女の人生をことさら糾弾するわけでもなければ、ことさら憐れんでみせるわけでもない。外部から冷たく突き放して客観的に描いているわけではなく、かといって彼女の内面に肉薄して観客の感情移入を誘うわけでもない。主演のマルティーヌ・キャロルが当時の人気女優だったことで、観客は最初から彼女を応援する気持ちになることを見越しているのかもしれない。しかしそうした予断なしに真っさらなところからこの映画を観ると、印象はやはり曖昧でボンヤリとしてしまうのだ。

 映画はローラがアメリカに渡ってサーカスの巡業をするシーンで終わるが、実際の彼女はその後さらに落ちぶれて、最後は極貧の中で40歳の誕生日を迎えることなく亡くなったという。

(原題:Lola Montes)

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12月23日〜1月13日公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム
宣伝:VALERIA 配給協力:(社)コミュニティシネマセンター
1956年、2009年|1時間50分|フランス|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://www.eiganokuni.com/meisaku4-rekishi/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:歴史は女で作られる
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