フィフティ・フィフティ

2011/11/08 アスミック・エース試写室
ガンで生存率50%を宣告された青年の面白おかしい闘病記。
笑えて、笑えて、そして、泣ける。by K. Hattori

5050  シアトルの公営ラジオ局に勤めているアダムは、少し前から腰に痛みを感じていた。気になって医者に行くと、なんと背骨の神経にガンができているという。酒もタバコもやらない27歳の若さで、なぜガンにならなくちゃいけないのだ。しかもこのガンはかなり厄介で生存率は50%、他の箇所に移転していればそれが10%に下がるという。母親は彼と同居すると言いだしたが、当面身の回りの世話は恋人がしてくれることになった。同僚で親友のカイルは「生存率50%は悪かねえ。カジノで勝率50%なら大勝ちだ!」と彼流の言い方で励ましてくれる。新米セラピストのキャサリンも、ぎこちなく不器用な態度ながらアダムの支えになろうとしてくれる。抗ガン剤治療では、同じような病気の患者たち(老人だが)と友達にもなった。そう、病気はそんなに悪いことばかりじゃない。しかし何しろ生死の確率は五分と五分。病気の進行と抗ガン剤の副作用で、アダムの体調は悪化の一途をたどるのだった……。

 本作の脚本家ウィル・レイサーは若くして実際にガンにかかり、その時の経験を元にしてこの映画の脚本を書き上げた。映画の中では脚本家の体験が、2人のキャラクターに分けられている。ガンを患うアダムと、その親友でガンを笑い飛ばそうとする楽天家のカイルだ。「ガンになると女の子にもてる」というのは映画の中のカイルの主張だが、これは脚本家の実体験によるものなのだとか。この映画のユニークさは、このカイルというキャラクターによるところが大きい。この男の存在が、この映画をどれほど明るいものにしていることか。主人公のアダムがいくら明るく振る舞っても、それだけでは死を目前にした病人の空元気のように見えてしまったはず。主人公が未来の明るい面や希望に目を向けようとしても、それは病気から目を背ける現実逃避のように見えてしまったのではないだろうか。映画はカイルという徹底的に楽天的に振る舞う男を主人公の側に置き、彼を主人公の代弁者にすることで、この映画からそうした負の面を拭い取ることに成功している。

 主人公の病気治療のガイド役として、新人セラピストのキャサリンという若い女性を配置したのも上手い。劇中に「僕等はふたりとも新人だ」という台詞があるのだが、どんな患者にとっても「ガンで死に直面する」という体験は一生にそう何度もあることではない。誰にとっても自分の死は1度限りのもので、自分の死に立ち向かう人は誰もが新人なのだ。そんな主人公に、やはりセラピストとしてよちよち歩きをはじめたばかりの女性を添わせることで、セラピストのキャサリンは映画を観ている観客の視点を代行してくれる。彼女はこの物語の傍観者として物語に登場し、観客が主人公に感情移入して行くのに合わせて、物語に欠かせない登場人物に成長してゆくのだ。よく考えられた脚本だと思う。

(原題:50/50)

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12月1日公開予定 TOHOシネマズ渋谷、TOHOシネマズシャンテ
配給・宣伝:アスミック・エース パブリシティ:メゾン
2011年|1時間40分|アメリカ|カラー|ヴィスタ・サイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://5050.asmik-ace.co.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:フィフティ・フィフティ
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