現在テレビ放送中の人気アニメ「スイートプリキュア♪」の劇場版。テレビ放送と無関係の番外編ではなく放送中の物語と連続性を持った作品だが、１話完結型のテレビ放送と同じく、このエピソードはそれだけで完結した１時間ちょっとの作品に仕上がっている。話の順序としては、悪に操られていたメフィストが元の記憶を取り戻した10月23日放送の第36話のすぐ後に29日公開初日のこの映画が入り、この映画の結果を受けて30日放送の第37話があるという流れ。30日放送回でメフィストがメイジャーランドに戻っていたので、じつはテレビ放送を見ながら「あれれ？」と思っていたのだ。その間には、こういう話があったのか。もっともこの映画版を見なくても、テレビを見るのに困るようなことはないわけだけれど……。
36話でメフィストが記憶を取り戻したので、父親の様子を見守っていたアコ（キュアミューズ）も父と一緒にメイジャーランドに戻ることになった。ところがその時、あちこちで音楽が鳴らなくなるという出来事が発生。「これはメイジャーランドに何か起きている！」と確信したプリキュアとメフィストは、大急ぎでメイジャーランドへ。だがそこで見たのは、完全に音楽を失って荒廃しているメイジャーランドの姿だった。人々は石のように固まって、生きたまま死んでいる。メイジャーランドで唯一生き残った少女スズは、この出来事を引き起こした犯人は女王のアフロディテだと言う。だが宮殿に向かったアコとメフィストが見たのは、邪悪な姿に変貌したアフロディテの姿だった。一方キュアメロディ、キュアリズム、キュアビートの３人は、アフロディテがヒーリングチェストを奪うために送り出したイケメン３人組、メイジャー３と戦っていた。だが肝心のヒーリングチェストはどこに……。
物語のパターン自体はテレビ放送版をそのまま拡大したような形だが、主役のプリキュア３人組の物語と同時進行で、娘アコとの絆を取り戻そうと奮闘するメフィストの物語が描かれる。テレビ版からのストーリーの流れを考えても、ここにこういうエピソードが入るのは納得できるタイミング。アコは父メフィストのためにずいぶん苦労し、命がけで戦ってもいたのだから、それに見合う何かを父もしないとバランスが悪い。「記憶が戻りました」「メイジャーランドで王様に戻ります」では、虫がよすぎるでしょうよメフィストさん、ということなのだ。愛するアコのために必死で思い出の歌を思い出そうとするメフィストの姿は、滑稽であり、憐れであり、そしてカッコいいのだ！ 子供と一緒に映画館に来ていたパパたちは、今回のメフィストの姿を苦笑いしながら見つめ、同時に心から声援を送ったに違いない。苦しむ娘を見ながらオロオロし、しかしそれでも必死に心の歌を思い出そうとする彼の姿は、小さな子供を持つパパたちの心とシンクロしているはずなのだ。
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