ゴメンナサイ

2011/10/14 relations.デジタル試写室
読んだ人を死に至らしめる「呪いの脚本」はなぜ生まれたか。
人気携帯小説をアイドル主演で映画化。by K. Hattori

Gomennasai  携帯小説サイト「魔法のiランド」で80万人が読んだと言われる同名の人気ホラー小説を、アイドルユニット「Buono!」主演で映画化した学園ホラー映画。上映時間は1時間半ほどだが、その内半分ほどを使ってメインのストーリーを語った後、残り時間をさらに半分に分けて、その物語の前日譚と後日譚を紹介する。この3つの物語の前に、主演のBuono!によるイントロダクションと、エピローグ風のオマケ映像が付いているのが面白い。物語自体は別にどうということもなかったが、こうした仕掛けで観客を楽しませようというサービス精神に感心する。物語はそれがどんな筋立てなのかも大切だが、それをどう語るかという演出も大事だ。この映画はその点、いろいろと凝った演出をしてくれる。

 高校で文芸部に所属している日高由香(原作者と同じ名前)は、顧問の教師から同じクラスの黒羽比那子を勧誘するように言われて彼女に声をかける。彼女の書いた小説が、雑誌のコンテストに入賞したからだ。だが比那子は即座にこれを断る。彼女はずば抜けて成績優秀だが、性格が暗くて友人もおらず、クラスの皆から疎まれていた。特に岡田詩織は彼女に憎しみの目を向ける。クラスの人気者である詩織だが、成績では絶対に彼女に勝てないことが気にくわないのだ。詩織はクラス内で比那子を村八分にしようとするが、もともと孤独を好む彼女にはそれもどこ吹く風。やがて学園祭の準備が始まると、クラスで上演する演劇の演出家は詩織に決まり、彼女の指名で脚本は比那子が書くことになった。これは詩織の比那子に対する嫌がらせ。比那子が書いた脚本に何かと難癖を付けて、彼女を困らせることが目的なのは誰の目にも明らかだった。だがその目的を知っているはずの比那子は、脚本執筆に没頭していく。じつはこの脚本こそ、比那子の復讐に不可欠なものだったのだ。

 この映画の残念なところは、「文字で人を殺す」というユニークなアイデアが、映画の後半では「比那子の呪いが文字を伝って伝染する」という話にすり替わってしまうことだ。文章テクニックだけで読む人間の心をわしづかみにしたいというのは、文章を書く人間なら誰しもが考えること。しかし黒羽比那子はそれを取り越して、文章だけで読む人間の肉体をコントロールし死に至らしめることに成功した。これは何と素晴らしいアイデアだろうか。ところが映画はその後日談で、この素晴らしいアイデアを自ら土足で踏みにじってしまうのだ。

 こうした物語の上での齟齬が、原作にもともとあったのものなのか、それとも映画化する際に生じたものなのか、原作を読んでいない僕にはわからない。仮にこれが原作にあったものなら、それは脚本の段階でうまく直しておくべきだと思うし、映画独自の脚色だとしたら随分と余計なことをしたものだと思う。せっかくの面白いアイデアが、大きく花開く前に散らされてしまったようなものだ。

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10月29日公開予定 ユナイテッド・シネマ豊洲
配給:Thanks Lab.
2011年|1時間32分|日本|カラー|ビスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://gomen-nasai.com/.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ゴメンナサイ
原作:ゴメンナサイ(日高由香)
関連DVD:Buono!
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