マーベル・コミックのヒーローたちが共演する人気コミック・シリーズ「アベンジャーズ」が、2012年に『ザ・アベンジャーズ』として実写映画化される。これまでに、アイアンマン、ハルク、ソー(マイティ・ソー)などのメンバーがスクリーンに登場し、それぞれ映画のラストシーンでサミュエル・L・ジャクソンからアベンジャーズに参加するよう誘われていた。『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』は、『ザ・アベンジャーズ』のプリクエル(前日談)となる物語で、後にチームのリーダーとなるキャプテン・アメリカの誕生を描くエピソードだ。物語は北極圏の氷原からはじまる。分厚い氷の下から発見された、第二次世界大戦中の巨大な航空機。氷詰めになったその機体から、物語は第二次大戦中のアメリカに戻り、最後にまた氷詰めの飛行機のその後を描いて『ザ・アベンジャーズ』につなげていく。
1942年のアメリカ。第二次大戦が始まって、大勢の若者たちが自由を守る戦いのため戦地に向かっていた。スティーブ・ロジャースは正義感と愛国心と意志の強さでは誰にも負けない強い心の持ち主だったが、子供の頃から虚弱体質で、新兵検査ではいつも不合格のスタンプを押されてしまう。だが彼の負けん気の強さを気に入ったアースキン博士は、スティーブを陸軍に入隊させて特殊な作戦に従事させようと考える。それは研究中の血清を使って、スーパーソルジャーの軍団を作ることだ。実験は成功してスティーブはスーパーソルジャーに生まれ変わるが、潜入したドイツ軍スパイの手で博士は殺され、軍団の編成は不可能になってしまう。陸軍はたったひとりのスーパーソルジャーであるスティーブを、軍のマスコットキャラクター「キャプテン・アメリカ」として宣伝に利用しはじめる。だが慰問先の欧州戦線で親友の部隊が行方不明になったと知ったスティーブは、たったひとりで敵陣に乗り込んで行くのだった……。
監督は『ジュラシック・パークIII』や『ウルフマン』のジョー・ジョンストン。主人公スティーブ・ロジャースを演じるのはクリス・エヴァンスだが、変身前の虚弱体質時代は別の俳優が演じている。ドラマとしてはこの虚弱時代がとても重要。スティーブの正義感、愛国心、ユーモア、何があってもへこたれない粘り強さ、誠実さなど、主人公の持つすべての美徳は、この虚弱時代にきちんと描写されていなければならない。でなければ変身前にはまるで誰からも見向きもされなかった男が、強くたくましい男に変身したからこそヒーローになれたという話になってしまう。この映画は変身前のエピソードを丁寧に描いて、キャプテン・アメリカがその「人柄」で人々の尊敬を勝ち得ていることを観客に納得させようとしているが、それでも主要舞台が戦場だけに、「強い男が尊敬される」という罠に何度も捕まりそうになっている。しかしこれは、ヒーローものの宿命だろう。
(原題:Captain America: The First Avenger)