カンパニーメン

2011/08/05 京橋テアトル試写室
不況で会社から突然解雇された男たちの生きる道……。
地味目の映画だが充実感のある作品。by K. Hattori

Companymen  2008年9月にアメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界中の金融街に衝撃が走った。このリーマン・ショックによって株価低迷の苦境に立たされた大企業は、大規模なリストラで不況の危機を乗り切ろうとする。ボストンに本社を構えるGTX社もそのひとつだった。同社は赤字を抱える造船と鉄道部門を統合し、余剰人員を解雇する。販売部長のボビー・ウォーカーも解雇組のひとり。彼は出社した朝一番に会議室に呼び出され、そのまま会社を放り出されてしまったのだ。解雇手当は12週分。一流大学を出てMBAも取得し、入社以来12年間エリートコースを歩んできた彼は突然の解雇に腹を立てながらも、すぐに再就職できるだろいう見込みがあった。だが現実は、行く先々で就職の門前払いを食わされる日々だ。家のローン支払いは滞り、ゴルフ場の会員権も失った。クリスマスには失業手当も切れ、ウォーカー家は車や家を手放さざるを得なくなる。一方会社に残った者たちにも、大きな試練が待っていた。株価低迷で買収の危機にさらされた会社は、2回目の大規模リストラを実施。造船部門は完全閉鎖され、造船担当の副社長すら解雇されてしまったのだ……。

 映画はベン・アフレック演じるボビー・ウォーカーが解雇されるところから始まり、彼が新しい職場で働き始めるところで終わる。そういう意味で、この映画の主人公がボビーであることは間違いない。しかし映画の中ではGTX社の副社長ジーン・マクラリー(トミー・リー・ジョーンズ)や、溶接工から同社重役にまで上り詰めた勤続30年のベテラン社員フィル・ウッドワード(クリス・クーパー)にも多くのエピソードを費やし、3人の男たちとその周辺人物たちが重層的なドラマを紡ぎ出す群像劇となっている。周辺人物としてはボビーと家族の物語が全体の大部分を占め、妻マギーと大工をしている彼女の兄ジャックのキャラクターが大きくクローズアップされて魅力的に描かれる。ジャックを演じたケヴィン・コスナーが貫禄たっぷりの好演。これは誰が演じても好ましい人物にはなると思うが、コスナーが演じたことでジャックという男の魅力が大きく膨らんでいると思う。

 それにしてもリアルな映画だ。会社をクビになった男たちが力を合わせて一発逆転の成功をつかみ、クビにした会社をギャフンと言わせる……といったファンタジーはこの世に存在しない。この映画を観ると、アメリカ社会の今が見えてくる。マイケル・ムーアが『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』で暴き出された過酷な資本主義社会アメリカの中で、人々がどのように暮らしているのかという現実が垣間見えるのだ。この映画に出てくる人たちは、副社長のジーン以外は決して超高給取りというわけではない。主人公ボビーのGTXでの給与は年12万ドル。これは日本円に換算して1千万に満たないのだ。(まあこうなる原因は超円高にあるのだけれど。)

(原題:The Company Men)

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9月23日公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町
配給:日活 宣伝協力:スキップ
2010年|1時間44分|アメリカ|カラー|アメリカンビスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://companymen-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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