スノーフレーク

2011/06/21 ショウゲート試写室
10年前に死んだはずの幼なじみは生きているのか?
桐谷美玲主演の青春ミステリー映画。by K. Hattori

Zenbumirei  真乃、速人、亨。近所に住む幼なじみ同士として、いつも一緒に過ごしていた3人の子供たち。だが小学校5年生の時、速人の家族は車で岸壁から海に飛び込んで一家心中。速人の遺体は見つからなかったが、彼もまた死んだものとされた。だがそれから10年たっても、真乃はまだ心のどこかで速人の死を受け入れられない。子供の頃から自分に思いを寄せてくれている亨の気持ちに応えられないのも、幼い初恋の相手である速人の消えた理由を、自分でもまだ消化し切れていないからなのだ。就職のため故郷を離れる前に、自分の気持ちに区切りを付けておきたい。真乃は速人の死について改めて調べはじめる。そんな真乃の前に、死んだ速人とうりふたつの青年・勇麻が現れる。彼は速人の従兄弟だというのだが……。

 『乱反射』と同時公開される、桐谷美玲主演のサスペンス・ミステリー。監督も『乱反射』と同じ谷口正晃。大崎梢の同名小説を、矢新図(やらたはかる)が脚色している。一種の謎解きミステリーではあるのだが、「犯人は誰だ!」的なわかりやすい「謎」がないのが弱味。一家心中の車の中から消え、行方不明になっている速人はどこに消えたのか?というのが一応はこの映画の「謎」なのだが、これに本当に興味関心のある人がどれだけいるのだろう。こうした謎は誰が見ても「不思議だ」「不自然だ」「奇妙だ」「わからない」と思うからこそ謎として機能するだろうに、この映画では冒頭でヒロイン自身が言っているとおり、速人が消えたこと自体は別に不自然でも不思議でもないのだ。

 そこでこの映画は、死んだはずの速人が10年後に現れるという「謎」を持ち出して来る。しかしこれが従兄弟の勇麻だと比較的早くわかってしまうので、そこから先に「謎」を引っ張って行けない。サスペンスは結論をどこまでも先延ばしし、結論に着地させないからこそサスペンス(宙吊り)であり続けるのに、この映画は謎を小出しにして、その都度どこかに着地させてしまうのだ。原作は未読なのだが、これは物語の序盤からもっと「謎」を注ぎ足して、映画を観る人を「次にどうなるのか?」とハラハラさせてほしかった。速人が生きているのなら、なぜ彼は姿を現さないのか。これまで10年間も音信不通だったくせに、突然10年後に現れたのはなぜなのか。これまで10年間、どこに消えてどんな暮らしをしていたのか。そして何より、彼は10年振りに連絡してきた真乃に、何を求めているのだろうか。映画の中では本来問題にしなければならないこうした疑問を素通りして、ものすごく小さな閉じた世界の中で物語を完結させてしまう。

 同じ監督と主演女優で作られている映画だが、『乱反射』とは雲泥の差。映画は主演俳優や監督の技量以前に、やはり脚本なのだと思わせる作品になっている。函館というロケーションも、あまり生かされているとは思えなかったのが残念。

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8月6日公開予定 シネマート新宿ほか
配給:スタイルジャム
2011年|1時間11分|日本|カラー|ヴィスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://www.ranhansha-snowflake.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:スノーフレーク
主題歌CD:Sweet&Bitter(桐谷美玲)
関連書籍:CINEMA×桐谷美玲 Making of 「乱反射 and スノーフレーク」 Official Book
原作:スノーフレーク(大崎梢)
関連DVD:谷口正晃監督
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