ライフ

−いのちをつなぐ物語−

2011/06/21 シネマート試写室(シネマート六本木スクリーン3)
BBC EARTH製作の動物ドキュメンタリー映画最新作。
『ディープ・ブルー』『アース』に続く第3弾。by K. Hattori

Onelife  BBC EARTH制作のドキュメンタリーシリーズ「ライフ」は、世界各国で撮影した動物たちの生態を50分ずつ10回の放送にまとめたミニシリーズ。日本でも既にDVDやBlu-rayで発売されている人気作だが、これを1時間半というコンパクトな時間に再編集し、劇場の大スクリーンで観られる作品に仕上げたのが本作『ライフ −いのちをつなぐ物語−』だ。劇場作品にするにあたり、ナレーションを007俳優のダニエル・クレイグが新たに録音している。日本版のナレーションは、松本幸四郎と松たか子の父子共演だ。

 BBCの動物ドキュメンタリー映画はこれまにも『ディープ・ブルー』や『アース』が公開されているが、過去の作品もテレビドキュメンタリー映像の再編集版だ。前者は「ブルー・プラネット」、後者は「プラネット・アース」の再編集版だった。こうした番組のために取材撮影された映像は、NHKの動物ドキュメンタリー番組「ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜」などで使用されることもある。テレビの動物ドキュメントが好きな人にとっては、今回の映画も「あの映像だ!」と心当たりのあるものも出てくるかもしれない。ならばテレビで見られる映像を、わざわざ劇場で観る意味はどこにあるのか。それはやはり、画面が大きくなると迫力が桁違いだからと言うしかない。

 映画館で観ようが自宅のテレビでDVD鑑賞しようが、同じ映画なら中身は変わらないという人がいる。しかし僕はBBCの動物ドキュメンタリーを観るたびに、映画鑑賞体験にとって「スクリーンの大きさ」の意義はとてつもなく大きいと認識せざるを得ないのだ。確かに両者は同じ映像だろう。高解像度の大型モニターで見るBlu-rayの映像と、劇場スクリーンの映像のどちらがより高解像度かは微妙なところだ。高性能なAV機器が安価で市販されている現在、映画館で観る映画と自宅で観る映画のクオリティは限りなく接近している。しかし最後まで埋まらないのが、結局はスクリーンの大きさだ。そしてこの大きさが、映画の内容によっては大きく作品の印象を変えてしまう。

 こうした動物ドキュメンタリーの場合、テレビで見る映像から得られるのが動物についての「知識」だとすれば、映画館のスクリーンで得られるのは「体験」だ。目と耳から「情報」を仕入れるテレビに対して、映画館ではそこにいる動物たちの「存在」そのものが伝わってくる。同じ映像素材であっても、その違いは大きい。しかし同じことは、じつは他のすべての映画についても言えるのだ。劇映画の場合はストーリーを頭で追ってしまうので「大スクリーンによる映像体験」の意味が二の次になりがちだが、それでも知識や情報としての映画鑑賞と、存在を体験する映画鑑賞の違いは必ず存在するに違いない。『ライフ』は映画館の優位性を改めて感じさせる、迫真の「映像体験」なのだ。

(原題:One Life)

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9月1日公開予定 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:エイベックス・エンタテインメント
宣伝:KICCORIT、P2、NO FUTURE
2011年|1時間25分|イギリス|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://onelifemovie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ライフ いのちをつなぐ物語
関連DVD:BBC EARTH ライフ
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