SUPER 8

スーパーエイト

2011/06/10 TOHOシネマズ日劇3
郊外の列車転覆事故で貨車から逃げ出したものとは……。
スピルバーグが製作したジュブナイルSF。by K. Hattori

Super8  1979年の夏。アメリカ・オハイオ州の小さな町で暮らす14歳の少年たちが、アマチュア映画コンテストに出品するための8ミリ映画製作に打ち込んでいた。夜中に家を抜け出し、主演女優でもある女の子が無免許で運転する車に乗り込んで、町外れにある普段は使われていない駅舎に向かう。そこで映画の中の重要なワンシーンを撮影するのだ。だが彼らが撮影をしている目の前で、線路に入り込んだピックアップトラックと接触した貨物列車が大破。車両は脱線転覆して周囲に散乱し、積み荷のの一部があたり一面に飛び散った。少年たちは仰天して家に飛んで帰るが、この時、たまたま動いていた8ミリフィルムには驚くべきものが撮影されていた……。

 監督のJ.J.エイブラムスは『M:I:III』と『スター・トレック』に続く3本目の監督作で、今回は製作と脚本も兼任している。この監督は1966年生まれだから、まさに僕と同世代(同年齢!)だ。今回の映画に登場する少年たちは、監督自身の分身のようなものだろう。この映画には製作としてスピルバーグも関わっているのだが、スピルバーグは僕の世代にとって「我らの時代の巨匠」であり、『ジョーズ』『未知との遭遇』などはリアルタイムで観ている。そんなわけで今回の『SUPER 8 / スーパーエイト』は観る前から期待でワクワクしていた。1980年代にスピルバーグやルーカスが監督したり製作した映画を浴びるように観て育った世代にとっては、さぞや胸躍る体験になるに違いないと思っていた。ところが残念なことに、この映画はその期待に応えてくれない。「さあ、俺を感動させてくれ!」とスクリーンの前で身構えている僕は、見事に肩すかしを食ってしまったのだ。

 この映画はスピルバーグ映画で育った監督が、スピルバーグへの敬愛の情を隠すことなく作り上げたパスティーシュ(模倣)だ。主人公の少年の家が片親であるところからして、既にスピルバーグ映画の臭いがするではないか。少年たちが8ミリ映画の製作に熱中している姿は、同じように8ミリ映画の製作から世界的な映画監督になったスピルバーグにつながるキャラクター設定。物語のベースは『E.T.』や『未知との遭遇』を連想させる。しかしこの映画はスピルバーグ映画からスタイルだけを借りた、魂のこもらない模造品になっている。この映画には『未知との遭遇』や『E.T.』にあった、宇宙への望郷の念にも似た憧れが欠如している。目の前にある「この場所」から、まだ見ぬ「どこか他の場所」を夢見る気持ちが、この映画の中にはまったくないのだ。

 1980年代にスピルバーグが製作した映画には、どれも作り手の「映画を作りたい欲望」と「映画を作れる喜び」がはち切れんばかりに盛り込まれていた。そうしたものが、今回の映画からは感じられない。一番面白かったのは列車転覆まで。あとはひたすら予定調和で甘ったるいだけの映画に終わってしまった。

(原題:Super 8)

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6月24日公開予定 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:パラマウント・ピクチャーズ ジャパン
宣伝:P2、ノーフューチャー
2011年|1時間52分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SDDS、SR(シアンダイ)
関連ホームページ:http://www.super8-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:SUPER 8 / スーパーエイト
サントラCD:SUPER 8
DVD:J.J.エイブラムス監督
関連DVD:スティーブン・スピルバーグ
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