ガクドリ

2011/02/18 サムライシアター新宿
実在する学生限定ドリフト走行コンテストの映画化。
脚本のまとまりが悪いのは致命的。by K. Hattori

Gakudori  群馬の赤城山大学に入学した佐藤マサキは、教習所で出会った美人教官・菜々子が大学自動車部のOGだったことを知ると、彼女に接近するため自分も自動車部に入部。自動車部は創部以来、毎年夏に開催される全日本学生ドリフト王座決定戦(ガクドリ)に出場していた。マサキも早速ドリフト走行に興味を持ち、その魅力のとりこになっていくのだが……。

 実在する学生限定ドリフト走行コンテストをモチーフに、恋と友情、ライバルとの確執などを描いた青春映画。僕はドリフト走行というと「サーキットの狼」を思い出してしまう世代で、峠道に出没する「ドリフト族」をニュースで知っている程度。ドリフト専門のコンテストがあるなんてことは、この映画を観るまでまったく知らなかった。ドリフト・コンテスト(ドリフのコントみたいだな)ではスピードではなく、ドリフト走行のかっこよさが評価されるんだとか。ただしこの映画が、ドリフト走行の魅力を十分に伝え切れているかというと、僕はだいぶ疑問を感じてしまう。この映画からは、ドリフト走行のかっこよさが伝わってこないからだ。ドリフト走行をかっこよく撮影するには専門の撮影機器やドライバーが必要になり、この映画の製作予算ではそれが不可能だったということかもしれない。

 しかしそうした撮影技術以前に僕がこの映画に疑問を持つのは、脚本があまりに中途半端なこと。主人公マサキの話と同時に、この映画では2つの物語が併走して行く。金持ちの走り屋・速水俊足の話と、女子大生ギャルドリ軍団のリーダー莉香と仲間たちのエピソードだ。この2つのエピソードにはそれぞれ周辺人物がいてそれなりにまとまったボリュームの話になっているのだが、それが劇中で接点や合流点を持たないまま、最期まで併走して尻切れトンボになってしまうことには違和感を持つ。オムニバス風に(あるいはグランドホテル風に)複数のエピソードを併走させる手法はあってもいいのだが、その場合、エピソード同士が有機的なつながりを持ち、それぞれのエピソードに明確な着地点を用意するのが常道だろう。それは映画の最期に、マサキ、速水、莉香たちが、三者三様のドリフト走行を見せるというフィナーレでも構わない。サーキットに集まった彼らが、互いに互いを知らぬまま一瞬交差していくという場面でもいいのだ。しかしこの映画ではガクドリ当日サーキットに到着した時点で、速水と莉香のエピソードはオチが付かないまま放り出されてしまう。ちゃんと筋を通して、話のそれぞれに落とし前を付けてほしいのだ。

 主演の木ノ本嶺浩は「仮面ライダーW」の仮面ライダーアクセル=照井竜役が印象的だったが、今回はそれとは正反対の軽薄でお調子者の大学生役。照井竜のイメージが強烈だったので、今回は「こんな面もあったのね」という意外な発見だった。役柄を広げる意味ではいい選択だったかも。

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4月9日公開予定 池袋シネマロサ
配給:東映ビデオ 宣伝:Thanks Lab.
2010年|1時間30分|日本|カラー
関連ホームページ:http://gakudori-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ガクドリ
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