1969年8月にニューヨーク郊外で開催された「ウッドストック ミュージック&アーツ・フェスティバル」は、3日間で40万人という大量動員を果たした20世紀最大の音楽イベントだった。この映画についてはコンサートの翌年に『ウッドストック』という映画が作られ(マイケル・ウォドレー監督、編集にはマーティン・スコセッシも参加した)、その年のアカデミー賞を受賞している。上映時間3時間4分の大作。コンサートから40年を経過した2009年には新しいディレクターズカット版がDVDとBlu-rayで発売され、総上映時間3時間45分という特大ボリュームの映画になった。本作『ウッドストックがやってくる!』は、そのウッドストック・フェスティバルに関わったひとりの青年の物語だ。
1969年。ニューヨークでグラフィックデザインやインテリアデザインの仕事をしていたエリオット・タイバーは、両親が経営する郊外のおんぼろモーテルに呼び出される。田舎町のモーテルには客が寄りつかず、銀行から借金の督促を受けているのだ。エリオットの頼みで銀行は数ヶ月の猶予を認めてくれたが、これといって借金を返す当てがあるわけでもない。これといった産業も名物もない町は全体に地盤沈下していて、エリオットが会長を務める商工会も老人ばかりで覇気がない。そんな時、近くの町で開催予定だった「ウッドストック・フェスティバル」が、地元民の反対で暗礁に乗り上げた。新聞記事でこれを知ったエリオットはすぐに主催者に連絡して、代替地として自分の町をアピールする。コンサートが開催されれば人が集まる。モーテルにも客が来るはずだ。しかしこの瞬間から、エリオットの人生は巨大な竜巻に巻き込まれたような急展開を始めるのだった……。
原作はエリオット・タイバーの同名自伝。物語はウッドストック・フェスティバルの裏話だが、コンサートそのものはまったく出てこないし、ミュージシャンたちも出てこない。この映画で描かれているのは、脚光を浴びるコンサートのステージやバックステージ以外のすべてだ。コンサート開催地変更にまつわるドタバタ。開催地誘致者と主催者側の駆け引き。突貫工事で始まる準備工事と集まってくる関係者たち。コンサート開催を聞きつけて集まってくるヒッピーたち。コンサートで一儲けを企む地元民たちと、儲け話に取り残されて不満を募らせるその他の住民たち。飛び交う現金。アルコールとマリファナとLSDの狂騒。そして通りを埋め尽くしてコンサート会場に向かう、膨大な数の車、バイク、人、人、人の列……。映画『ウッドストック』で描かれたシーンも引用しつつ、映画は40年前の「若者の祭典」の熱気を再現していく。
周辺のエピソードが面白すぎて、主人公の物語が小さくなってしまったのが欠点と言えば欠点。しかしこの映画を観ると、まるで自分もウッドストックに行ったような気分になれる。
(原題:Taking Woodstock)
DVD:ウッドストックがやってくる!
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