携帯電話に連絡しても居所についてウソばかりついている恋人スジの不実な態度に愛想をつかし、韓国を去って留学してしまったジェジュン。だがスジには恋人に自分の正体を明かせない事情があった。彼女は国家情報院で働く情報部員だったのだ。それから3年後、ジェジュンと別れて以来新しい恋人に出会えないでいたスジの前に、突然ジェジュンが現れた。現在彼は、国際会計士としてばりばり働いているのだという。だがじつはジェジュンにもスジに言っていない秘密があった。彼は国家情報院の海外担当部署で働く、新米の情報部員だったのだ。ふたりは互いの正体を相手に打ち明けないまま、偶然にも同じ事件を別方向から調査する仕事をはじめるのだった。やがて互いの捜査資料上に、事件の核心現場に必ず現れる謎の人物の影が浮かび上がってくるのだが……。
『映画は映画だ』のカン・ジファンと、『彼女を信じないでください』『青春漫画 〜僕らの恋愛シナリオ〜』のキム・ハヌルが共演したアクション・ラブ・コメディ。互いの正体を隠したスパイ同士が、恋と仕事の間で右往左往しながら対立して行くというアイデア自体は、ブラピとアンジー共演の『Mr.& Mrs.スミス』に似ている部分がある。ただしこの映画では女性の凄腕エージェントに、ちょっと間抜けな男性新米エージェントという組み合わせになっているのが面白い。ちょっと頼りない半人前エージェントのジェジュンが、幾多の危機を乗り越えて一人前のエージェントに成長してゆくプロセスが、この映画の大きな柱のひとつになっている。
物語にはいろいろなエピソードが詰め込まれていて最初から最後まで楽しめるのだが、構成がもたついていてスピード感に欠けるところがある。これは主人公たちが捜査している事件の中に2〜3箇所の大きな山場を作り、最初の2回ぐらいは主人公たちが現場で間一髪ですれ違いとなり、最後にいよいよ鉢合わせするといった仕掛けがあってもよかったはずだ。こうした映画ではストーリー自体は単純に作っておき(ありきたりにという意味ではない)、味付けの段階でたくさんギャグを入れたりして膨らませていくのが定石。この映画は個々のエピソードの方が面白くなってしまい、軸がそれに振り回されているように思う。ストーリーの勢いが削がれることで、ギャグの切れ味が悪くなっているようにも感じる。
主人公たちが凄腕の情報局員であるはずなのに、交際相手のプロフィールすらまともに調べた形跡がないというのがこの映画の間抜けなところ。調べたところで経歴はバッチリ偽装されているわけだが、とりあえず調べるだけ調べるシーンを映画の前半に入れておけばいいのに。その後プロフィールが偽装されていることが捜査上明らかになれば、互いへの疑惑が深まってクライマックスのサスペンスはぐっと盛り上がったはずなのだ。
(原題:7級公務員)
DVD:7級公務員
サントラCD:7級公務員 関連DVD:シン・テラ監督 関連DVD:カン・ジファン 関連DVD:キム・ハヌル 関連DVD:チャン・ヨンナム 関連DVD:リュ・スンヨン |