デイブレイカー

2010/09/21 アスミック・エース試写室
バンパイア映画と近未来SF映画の奇抜なドッキング。
サム・ニールのB路線が好きな人は必見!by K. Hattori

Daybreaker  短期間の内に地球上を覆いつくした治癒不可能な新しい感染症のため、人類のほとんどがバンパイアになった近未来。わずか10年ほどで人類の95%以上がバンパイアになったのは、人間の多くが「不老不死」を手に入れるため自ら進んでバンパイアになることを選んだからだ。だが不老不死に必要なのは人間の生き血。人間とバンパイアの数が完全に逆転した世界では、その入手も容易ではない。新鮮な人血の供給を絶たれたバンパイアは、血を求める本能のままに振る舞う恐ろしいモンスターに変身してしまう……。世界中に人血を供給するブロムリー・マークス社で人工血液を研究しているエドワードは、バンパイアから逃れる人間たちのレジスタンス組織と接触し、リーダーのコーマックから「バンパイアを治療して人間に戻す方法がある」と聞かされる。エドワードは彼らと協力して、人類とバンパイアたちの未来を救えるのか?

 イーサン・ホーク主演のバンパイアムービー。管理社会の恐怖を描いた近未来SF映画と、バンパイア映画を結びつけた発想が面白い。この映画はそれに加えて、利益優先の大企業が抱える秘密を、その社員である主人公が暴いていく物語でもある。近未来ディストピア映画も、バンパイア映画も、あらかたやり尽くしてネタ切れではないかと思っていたが、こうやって本来は出会うはずのない要素を組み合わせると、これまで見たことのなかったような新しい映画が生まれるのだ。ここでは中世東ヨーロッパの伝説からよみがえった吸血鬼が、近代装備のハイテクビルや電気自動車などのテクノロジーとがまったく違和感なく共存する様子を見ることが出来る。人血不足でモンスター化したサブサイダーの襲撃シーンも強烈なインパクトがあるし、人間が生きたままバンパイアに解体されていくクライマックスの残酷流血描写は、ジョージ・A・ロメロのゾンビものに通じる世界。

 主演のイーサン・ホークや、ウィレム・デフォーはアメリカの俳優だが、その他の出演者はオーストラリアやニュージーランドの俳優が占めている。この映画はオーストラリアとアメリカの合作映画なのだ。監督は『アンデッド』のピーター&マイケル・スピエリッグ兄弟。ブロムリー・マークス社のバンパイア社長役で、サム・ニールが出演しているのが嬉しい。ニュージーランドからハリウッドに渡って『オーメン3/最後の闘争』で悪魔の子ダミアンを演じたサム・ニールは、文芸作品で格調高い演技を披露する一方、それと同じ格調高い演技力で『マウス・オブ・マッドネス』や『イベント・ホライゾン』などのB級ゲテモノ映画にも出演し続けている素晴らしい俳優だ。今回はそのニールの二面性が遺憾なく発揮された作品で、映画前半で大企業のトップとして貫禄たっぷりの姿を見せたかと思うと、後半では金色の目を光らせながら牙を剥きだして人間の喉にむしゃぶりつく。彼が映画から退場して行くラストカットには感動!

(原題:Daybreakers)

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11月27日公開予定 新宿バルト9
配給:ブロードメディア・スタジオ 宣伝:アルシネテラン
2008年|1時間38分|オーストラリア、アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.daybreakers-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:デイブレイカー
関連DVD:アンデッド(2003)
関連DVD:ピーター&マイケル・スピエリッグ監督
関連DVD:イーサン・ホーク
関連DVD:ウィレム・デフォー
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