アメリア

永遠の翼

2010/08/04 20世紀フォックス試写室
女性パイロットの草分けアメリア・イヤハートの伝記映画。
出来事の羅列でドラマとしては淡泊。by K. Hattori

Amelia (Score)  女性として初めて飛行機で大西洋を横断し(1928年)、その後自分自身の操縦する飛行機で単独横断飛行にも成功した(1932年)アメリカの女性飛行家アメリア・イヤハート。本作は彼女の伝記映画で、主演はオスカー女優のヒラリー・スワンク。イヤハートは日本ではほとんど知られていない人物だが、アメリカでは誰もが知っている歴史上のスーパー・ヒロインで、映画『ナイト・ミュージアム2』ではエイミー・アダムスがイヤハート役(彼女のマネキン役)で出演していた。それだけ人気のヒロインだから、伝記映画が作られるのもこれが初めてというわけではなく、1976年にはスーザン・クラーク主演のTVドラマが、1994年にはダイアン・キートン主演のテレビ映画が作られている。日本では2007年に宮本亜門のミュージカル「テイク・フライト」で、天海祐希がイヤハートを演じていたそうだ。

 1937年、彼女が世界一周を目指して最後の飛行機飛び立つところから映画がはじまる。ここからは機上のイヤハートが自分の生い立ちや過去の冒険を回想する形で、彼女の人生が綴られていくマヅルカ形式の脚本構成だ。この形式のいいところは、長い時間をコンパクトに圧縮できること。本作でもアメリアの少女時代の思い出に始まり、生涯の伴侶となる出版業界人パットナムとの出会い、大西洋横断飛行の成功、一躍時の人として脚光を浴びる中での数々の冒険、ジーン・ヴィダルとの不倫、パットナムとの復縁、世界一周飛行への挑戦などがテンポよく綴られていく。しかしこの映画の欠点は、このテンポのよさかもしれない。さらさらとテンポよく次々にエピソードが現れては消え、どのエピソードも心に強い印象を残すことがないのだ。アメリアの人生のポイントになる部分を巧みに絵解きし、再現ドラマとして見せていくということではうまく行っている映画だと思うのだが、映画を最後まで観ても満足感や満腹感に乏しい。

 物語としてはアメリアとパットナム、ヴィダルの三角関係がひとつの縦軸になっているはずなのだが、描き方は淡泊でドラマが単なる出来事の羅列になってしまっている。これを恋愛ドラマとして観た場合、ヒロインのアメリアはとても魅力的に描かれているのに、相手役の男たちが陰影に乏しい平板な人物なのだ。リチャード・ギアやユアン・マクレガーというスター俳優のオーラだけでは、キャラクター描写の薄さを補いきれない。誰もが知る歴史ヒロインだけに、あまり踏み込んだ描き方をしても「事実と違う!」といった批判を受ける可能性がある。それよりは誰もが知るアメリア像を壊さない程度に、エピソードを絵解きしていく方が無難なのかもしれないが……。

 製作総指揮も兼ねたヒラリー・スワンクは好演。魅力に乏しい人物ばかりが登場するこの映画の中で、まがりなりにもヒロインが魅力的に見えたのは、スワンクの功績によるところも大きい。

(原題:Amelia)

11月27日公開予定 TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:ショウゲート 宣伝:樂舎
2009年|1時間51分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビーSR、SRD、DTS
関連ホームページ:http://www.
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アメリア 永遠の翼
DVD (Amazon.com):Amelia
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