不食の時代

〜愛と慈悲の少食〜

2010/07/26 アップリンク試写室
「断食の神様」こと甲田光雄医師が編み出した断食療法。
あらゆる病気が断食で治るのだそうだ。by K. Hattori

Fusyokunojidai  「西式甲田療法」というものがある。大阪で開業していた甲田光雄医師が、以前からあった「西式健康法」を独自に改良し、多くの患者に実践してきた断食少食療法だ。生野菜を中心にした少食と定期的な断食、それに西式健康法から取り入れた軽い体操を組み合わせることで、ありとあらゆる病気を薬や手術なしに治してしまうのだという。少食や断食によって人間の体は活性化し、体内に蓄積された毒素が排斥され、バランスの取れた健康な体が取り戻されるのだという。驚くのはこの療法で体質を改善された人たちが、1日わずか数百カロリーという極端な低カロリー状態で健康な生活を維持していることだ。現代の医学や栄養学では、1日の必須カロリーは1,500キロカロリー前後(性別や年齢、体重や作業量などにもよる)と言われているのだが、甲田療法の実践者の中には毎日の食事が生野菜ジュース1杯、80キロカロリー程度だけで15年間も健康に暮らしているという人がいるのだ。だからといって、こうした人たちがガリガリに痩せこけて骨と皮ばかりになっているわけではない。見た目は中肉中背、ごく普通の体系で、顔色もいい。そして全員が口を揃えて「体調がいい」と言うのだ。

 本作『不食の時代 〜愛と慈悲の少食〜』は、甲田療法とそれを生み出した甲田医師、甲田療法によって命を救われた患者たちについてのドキュメンタリーだ。僕は甲田療法というものをまったく知らなかったのだが、サンプラザ中野くんがダイエットして菜食主義になったのは甲田療法を実践したからだとのこと。(彼自身はホメオパシーにも傾倒しているようなので、一種の健康マニア、代替医療信奉者ではあるのだろう。)断食というと「断食道場」のようなものを連想する程度の知識しかなかったのだが、甲田医師は断食療法の世界では「断食の神様」と言われるような人だったそうで、理論と実践に裏打ちされた少食断食療法で、現代医学が見放したような不治の病を数多く癒してきたらしい。

 ここで「だそうで」だの「らしい」だのと歯切れの悪い言い回しになってしまうのは、僕自身この映画を観ても甲田療法の効果に半信半疑だからだ。この映画を観ていると、甲田療法の効果のほどはどうしたって話半分、眉唾物のいかがわしい話のように受け止めておくのが正解!という気持ちになってしまう。それというのもこの映画には、甲田療法についての「いい話」しか出てこないからだ。映画の中には甲田療法の理論と、甲田医師に心酔している患者たちの話と、甲田療法を紹介する講習会の様子と、甲田療法の効果を実証したと称する典拠不明のデータしか出てこない。映画を観る人たちが抱くであろう素朴な疑問を、映画の中でまったく打ち消すことなく、映画は自分たちにとって都合のいいことだけを喋り続けて終わってしまう。甲田療法のPR映画として、甲田療法の信奉者にとっては耳に心地よい映画なのだろうが……。

10月9日公開予定 渋谷アップリンクほか全国順次公開
配給協力・問い合わせ:イメージ・サテライト
2010年|1時間24分|日本|カラー|スタンダード|ステレオ
関連ホームページ:http://tetsushiratori.hp.infoseek.co.jp/pg23.html
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:不食の時代 〜愛と慈悲の少食〜
関連DVD:白鳥哲監督
関連書籍:甲田光雄
関連書籍:森美智代
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