アーマード

武装地帯

2010/02/08 SPE試写室
狂言強盗で大金を横領しようとした警備員たちが仲間割れ。
なぜか映画の後味がよろしくない。by K. Hattori

Armored  現金輸送車で大量の現金を運ぶ警備会社のガードマンたち。それは危険と隣り合わせのプロの仕事だ。ひとつ間違えば命に関わる職務の中で、男たちの結束は強く固まっていく。しかしそんな彼らの生活は、必ずしも運んでいる現金の額ほどに報われているわけではない。やがて自分たちの運ぶゲンナマの匂いが、男たちの理性を少しずつ狂わせる。「この金を自分たちのものにできれば、俺たちはクソッタレな人生から脱出できる!」。計画は万全。狙うのは大手金融機関からの集金日。車両に詰め込まれた現金は4,200万ドル。これを仲間たち6人でそっくりいただく手はずになっていたのだが……。

 シンプルで隙のない強盗計画が、後から加わった「新入り」のために台無しになってしまうという物語。古いギャング映画から最近の『デリンジャー』までお馴染みの、強盗ものの黄金パターンをなぞった作品だ。しかしこの映画では仲間に裏切られて破滅していく強盗団ではなく、仲間を裏切る新入りの側が主人公。一滴の血も流されないはずの強盗計画が見込み違いから目撃者殺しに及んだとき、新入りは良心に目覚めて仲間たちを敵に回すのだ。そこに待っているのは、金を奪うため血まなこになるかつての仲間の姿。裏切り者は殺されるしかない。だがただでは死ねない。新入りの男には、守らなければならない大切なものがあるからだ。

 登場人物の数も状況設定も限定されているため、映画としての規模はそれほど大きなものではない。しかしそのわりには出演者の顔ぶれが豪華だ。マット・ディロン、ジャン・レノ、ローレンス・フィッシュバーンなど。こうした顔ぶれに比べれば、物語の牽引役となる新人警備員役のコロンバス・ショートは、キャリアの上でも画面の中での存在感でも格下だろう。この映画の中ではこうした俳優としてのキャリアの違いが、そのまま警備員としてのキャリアの違いに重ね合わせられる。

 だがこの映画は何より脚本がいい。登場人物ひとりひとりのキャラクターが、立体的に描き分けられているのだ。この映画の中には、ただ出てきて退場していくだけの人間というのがいない。それぞれの人間にそれぞれの異なった人生のドラマがあり、それが映画の中のアクションを生々しい人生のドラマにしている。例えば映画後半で事件に巻き込まれる若い警官など、普通の映画ならただ「警官」という記号として映画に出てきて終わってしまいそうだ。しかしここではこの警官にも、ひとつの生活背景を与えている。この小さなエピソードがあることで、彼が事件に巻き込まれると映画を観る側も彼を放っておけなくなってしまうのだ。

 警官や兵士といった制服を着た人間は、映画の中でどうしても記号的に扱われやすい。出てきて、死んで、それでおしまいになりがちだ。でもこの映画はそうしない。考えてみればこの映画は、登場人物たちのほとんどすべてが制服を着ているという珍しい作品でもある。

(原題:Armored)

3月27日公開予定 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年|1時間27分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.buso-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アーマード 武装地帯
サントラCD:Armored
関連DVD:ニムロッド・アーントル監督
関連DVD:マット・ディロン
関連DVD:ジャン・レノ
関連DVD:ローレンス・フィッシュバーン
関連DVD:アマウリー・ノラスコ
関連DVD:フレッド・ウォード
関連DVD:マイロ・ヴィンティミリア
関連DVD:スキート・ウールリッチ (2)
関連DVD:コロンバス・ショート
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