ニューヨーク,アイラブユー

2009/11/16 映画美学校第1試写室
世界中から集められた10人の監督たちが描くニューヨーク。
日本からは岩井俊二監督が参加。by K. Hattori

Nyily  2006年にパリを舞台にした短編オムニバス映画『パリ、ジュテーム』を製作したエマニュエル・ベンビイが、ニューヨークを舞台に同じようなコンセプトで作った短編オムニバス映画。パリ編は120分の映画で18人の監督が参加し、ひとりあたり5分程度の持ち時間だったが、今回のニューヨーク編は103分の映画に10人参加なので、ひとりあたりの持ち時間は10分程度。エピソードによって長短はあるのだが、ある程度まとまった長いエピソードもあれば、ほんの数シーンで構成されている短いスケッチ風の作品もある。各エピソードに関連はないのだが、ビデオを持ち歩いて行く先々で撮影をしていく女性のエピソードがつなぎになって、全体としてなめらかに結束されている。そのため短編映画の寄せ集めという感じではなく、ロードムービーのように、長い1本の映画で幾つものエピソードが数珠つなぎになっているような構成にも見える。

 短編オムニバス映画は中身が玉石混淆になりがちなのだが、この映画はどのエピソードも粒ぞろいで中だるみすることがない。もちろん人によって好みというものはあるだろうし、僕にも好みはある。作家と編集者が電話だけでやり取りする岩井俊二監督のエピソードなどは、短編なればこそ実現できるエッジの効いたアイデアが心憎い。これは映画の長さが30分になってしまうと、このアイデアだけでは話が持たないだろう。10分前後というのは短編映画としても短い部類だが、その時間だからこそ実現できるアイデアというものがある。他の監督作でも、こうした「10分間の濃密さ」を感じさせるものが多かった。

 インド人の宝石商とユダヤ系の若い女性が会話をすることだけでほとんど成立している、ミーラー・ナーイル監督作の面白さ。こんなものは長編映画の中のワンシーンみたいなものだが、短編にするとひとつのドラマとして成立する。レストランの裏でタバコを吸う男女が会話をするという、イヴァン・アタル監督のエピソードも同じだ。ナタリー・ポートマンが監督した、小さな女の子と子守の男のエピソードも、やはり短い時間だからこそ観客たちを何となく騙し続けることができたりする。

 今回作られたエピソードを核にすることで、長編映画が作れそうなものも何編かある。高校生がダンスパーティーに女の子を誘うブレッド・ラトナー監督のエピソードや、古びたホテルを舞台にしたシェーカル・カプール監督の幻想的なエピソード、スー・チーが出演しているファティ・アキン監督のエピソードなどは、まるで長編映画の中の抜粋であるかのような背後の物語性を感じさせるものだった。

 出演者が豪華なこともあるが、どのエピソードもキャラクターが魅力的で、舞台となる街の力強い個性に負けていないのがいい。中には長めのテレビCMみたいなエピソードもあるが、それもまたひとつの面白さだ。

(原題:New York, I Love You)

2010年2月公開予定 TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
配給:IMJエンタテインメント、マジックアワー 営業・宣伝:マジックアワー
2009年|1時間43分|アメリカ|カラー|ヴィスタサイズ|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.ny-love.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ニューヨーク,アイラブユー
DVD (Amazon.com):New York, I Love You
関連DVD:岩井俊二監督
関連DVD:ファティ・アキン監督
関連DVD:イヴァン・アタル監督
関連DVD:アレン・ヒューズ監督
関連DVD:ジョシュア・マーストン監督
関連DVD:シェカール・カプール監督
関連DVD:ミーラー・ナーイル監督
関連DVD:ナタリー・ポートマン監督
関連DVD:ブレッド・ラトナー監督
関連DVD:チアン・ウェン監督
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