永遠の天

2009/10/16 映画美学校第1試写室
幼なじみの恋を描く中国版『フォレスト・ガンプ/一期一会』。
第22回東京国際映画祭コンペ作品。by K. Hattori

Eiten  原題の『天長地久』とは「老子」の中にある言葉で、「天地が永久に不変であるように、物事がいつまでも変わらずに続くこと(デジタル大辞泉)」。この映画は猛烈な勢いで変化し続け行く現代中国の社会情勢と対比させながら、変わることのない男女の愛を描いたラブストーリー。幼なじみのカップルが幾多の試練にもまれながら大人へと成長して愛を育んでゆく物語に、SARS騒動やオリンピックなどの社会的事件を絡ませていく手法は『フォレスト・ガンプ/一期一会』に少し似ている。監督のリー・ファンファンはニューヨーク大学芸術学部で監督術を学んだという女性監督で、これが長編映画デビュー作。彼女は監督だけでなく、脚本と編集、エグゼクティブ・プロデューサーも兼務している。おそらくそれほど大きな予算はかけていないはずだが、20年にわたる中国の変化を再現し、そこにドラマを配置してゆく構成はなかなか見事。この映画を観れば、中国という国がいかに短期間に経済成長を遂げたのかが一目瞭然だ。

 この映画のすぐ前に観た『ソフィーの復讐』でも「中国は金持ちになった!」と感じたが、その印象は本作によってより明確なものになった。主人公たちは狭い路地裏の暮らしから経済発展に後押しされるように生活水準を向上させ、大学にも進学し、卒業後は大手企業に就職してハリウッド映画さながらの洗練された生活を満喫するようになる。日本で言えば『ALWAYS 三丁目の夕日』に描かれたような昭和30年代の生活から、わずか10数年で欧米先進国並みの生活を手に入れたようなものだ。もちろん中国には都市部と農村の格差というものもあるのだろうが、この映画に出てくるのは都市部ではあっても、主人公たちは取り立てて「富裕層」というわけではなさそう。こうした生活実態の変化がリアルな実感を伴って描かれているのは、映画の作り手自身が海外留学を経験するような豊かさを実体験として持っているからだろう。この映画のヒロインには、リー・ファンファン監督自身の体験が反映しているのかもしれない。『ソフィーの復讐』のエヴァ・ジン監督もアメリカの大学(フロリダ州立大)に留学して映画を学んでいる。今後の中国映画は、こうしたアメリカ留学組が一部を牽引していくことになることは間違いなさそうだ。

 映画は幼なじみカップルの愛の物語に、現代史の中の様々な事件をからめていくという点では『フォレスト・ガンプ』なのだが、主人公が女性で、全体を貫く基軸となるのが三角関係で、恋物語を離れたヒロインの家族の物語にも大きな比重がかけられているという意味では、むしろ『風と共に去りぬ』に近いかも。映画導入部の衝撃的なシーンから観客を一気にわしづかみにし、複数の登場人物たちが織りなす運命的な出会いと別れのドラマを積み重ねていく筋運びにハラハラドキドキしっぱなし。日本公開未定だが、たぶんどこかの配給会社が買い付けるに違いない。

(原題:天長地久)

第22回東京国際映画祭 コンペティション部門参加作品
配給:未定
2009年|1時間55分|中国|カラー
関連ホームページ:http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=9
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:永遠の天
関連DVD:リー・ファンファン監督
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