天使の恋

2009/10/14 ショウゲート試写室
不覚にもこんな映画で泣かされてしまったではないか。
佐々木希がカワイイですなぁ……。by K. Hattori

Tenkoi  理央、17歳、高校生。街を歩けば周囲の男たち誰もが振り向くような華やかな美少女で、学校でも仲の良い数人の美少女たちとグループを作って他の少女たちから憧れの眼差しで見られる特権階級。だがその心は、冷たく凍てついている。理央は自分の周囲の人間を、自分にとって利益を生み出すか否かでしか見ようとしない。援助交際で周囲の男たちを手玉に取り、友人と称する少女たちとも欲得づくでの付き合いしかできない。3年前にあったある出来事が、彼女の心をひどく傷つけ荒ませてしまったのだ。だがそんな理央が、ひとりの男性に恋をしたことで大きく生き方を変えていく。だがそのお相手、大学で日本史を教える光輝には、理央に伝えられない重大な秘密があった……。

 人気のケータイ小説を映画化した作品だという。主人公の理央を演じるのは、本作が映画初主演となる佐々木希。恋人の光輝を谷原章介が演じている。ヒロインがひとりの男性との出会いを通して、最悪の女から素直で優しい女の子へと変化していくというのが大まかな流れ。そのため映画に最初に登場する理央は、すごくイヤ〜な女。正直、映画を観ていてもヒロインにまったく感情移入できず、同情することも出来ず、不愉快な気分になって気が滅入ってくる。映画としてはこのあたりに、もう少し工夫があってもいいような気がする。「嫌な女(男)がある出来事で生き方を変える」という話は、映画の中でこれまで何度も描かれてきたはず。でも本作ほど主人公を不愉快な人物として描いた作品は、あまりないように思える。もうちょっと何とかなるだろう、というのが僕の正直な気持ちだ。

 この映画を観ながら「今どきの女の子たちは、このヒロインのどこに魅力を感じ、自分と重ね合わせるのだろうか?」と考えていた。ヒロインは絶世の美少女だけど、誰もが美少女だというわけじゃない。ヒロインは援交で男たちを手玉に取り、計略を使って周囲の女の子たちも従える悪女だが、そこに魅力があるわけでもないだろう。ヒロイン自身も、そんな自分自身が本当は嫌いなのだ。

 しかしこの「自分が嫌い」という一点で、この映画のヒロインは観客(あるいは原作の読者)とつながり合っているのではないだろうか。「大嫌いな自分自身が、ひとりの男性と巡り会うことで変わる」という物語。要するにこれは、シンデレラの物語なのだ。家の中で継母や義姉たちに虐められていたシンデレラは、魔法使いや王子様と出会うことでその境遇から抜け出すことができた。王子と結婚した彼女が、その後幸せになれたかなんてどうでもいいこと。大事なのは「好ましくない自分」から抜け出すことに手を貸してくれる、運命的な誰かと出会うことなのだ。

 ヒロインの理央は自分自身で積極的に行動しているようだが、「誰か」の手を借りて変身するという点では、王子様を待ちわびる童話のお姫様と変わらない。時代は変わっても、女の子たちは白馬の王子を待っているのだ。

11月7日公開予定 新宿バルト9ほか
配給:ギャガ 宣伝:ドロップ Web宣伝:フラッグ
2009年|1時間59分|日本|カラー
関連ホームページ:http://tenkoi.gaga.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:天使の恋
原作:天使の恋(sin)
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