ドゥーニャとデイジー

2009/09/03 松竹試写室
幼なじみの親友同士である18歳の女の子の冒険の旅。
オランダの女の子は18歳で大人だ。by K. Hattori

Dunya  オランダで2002年から2004年まで放送されていた、人気TVドラマシリーズの続編にして映画版。放送終了から数年後に作られていて、物語の中でも主人公たちが少しずつ年を取っている。要するに『踊る大走査線 THE MOVIE』とか『ごくせん THE MOVIE』みたいなもので、テレビ版の同窓会であり、テレビを見ていた視聴者に対するプレゼントみたいな映画。日本ではTVドラマ版が放送されていないのに、なぜかこの映画版だけが劇場公開されることになった。僕も当然TV版は未見。それでも映画だけで一応の内容はわかるようになっている。主要登場人物だけをそっくりモロッコに移動させてしまうことで、おそらくはTV版が持っていたであろうさまざまな設定や約束事を、映画から切り離してしまったのもよかった。

 ご近所同士で幼なじみとして育った、ドゥーニャとデイジーという女の子たちが主人公。18歳になったふたりは親友同士だが、今ではそれぞれが別々の道を歩み始めている。モロッコ移民のドゥーニャは学生で、今でも両親や弟と同居中。母子家庭に育ったデイジーは母と継父が暮らすアパートを出て独立し、美容師見習いとして働いている。ドゥーニャが18歳の誕生日を迎えた日、モロッコからやってきた親戚が意外な話を持ち出してくる。ドゥーニャを息子の嫁に欲しいというのだ。突然の話に驚くドゥーニャだったが、両親はこの話に大乗り気。近々モロッコに戻って、結婚話を正式に進めようということになる。一方デイジーは恋人の子供を妊娠したが、それを告げたとたんに恋人は去ってしまう。自分自身も父親のいない子供として生まれたデイジーは、子供を生むべきか中絶すべきかに悩むが、そこで心の中に膨れ上がったのは「自分は父親に望まれて生まれてきたのだろうか?」という思い。彼女は自分の実の父が暮らしているというモロッコを目指す旅で、家族とともに故郷に戻っていたドゥーニャと再会する。

 18歳というと日本では高校3年生ぐらい。まだまだ子供という感じもするが、この映画の中ではその年の女の子が、ひとりは結婚を迫られ、もうひとりは母親になろうかなるまいかで葛藤する。そのこと自体は別にどうということでもないのだが、この映画で衝撃的なのは、そのことについて「まだ18歳なのに若すぎる!」という反論や意見がまったく出てこないこと。オランダの女の子の身体的精神的な成熟度合いが、日本人より10年も20年も進んでいるというわけではない。映画に登場するドゥーニャもデイジーも、日本でそこいらにいる18歳の女の子たちと変わらない。でも「結婚」も「妊娠」も、そこでは「まだ早い!」と言われない。18歳を取り巻く社会的な環境が、その社会が持ち合わせている価値観の尺度が、日本とはまるで異なっているのだ。これには驚いた。世界にはいろんな国があるなぁ……と実感させられた。

(原題:Dunya & Desie)

11月7日公開予定 新宿K's cinema
配給:ワコー、グアパ・グアポ 宣伝:グアパ・グアポ
2008年|1時間42分|オランダ、ベルギー|カラー|アメリカン・ヴィスタ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.dunya-desie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ドゥーニャとデイジー
関連DVD:ダナ・ネクスタン監督
関連DVD:マリアム・ハッソーニ
関連DVD:エヴァ・ヴァンダー・ウェイデーヴェン
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